昼間のバーで
Wed.20.05.2015 Posted in 恋愛
その休日の昼間は副業の打ち合わせをしていた。
しかしオレの上司でありパートナーであるボストン君は、このところ起きた諸事情によって不機嫌だった。

それほど態度に出している訳ではなかった。
だが長く一緒にいればちょっとした様子の違いにすぐに気付くものだ。

だからオレは訊いた。「どうしたんだ?」
彼は話した。てっきり「大した事じゃない」と素っ気なく言われるのかと思っていたのに、部外者であるオレに詳しい事情を。

打ち合わせの後はボストン君と別れて別の友人と遊ぶつもりだった。
だがそれは止めて彼に付き合う事にした。打ち合わせが終わっても「じゃあオレはこれで帰る」とは言わないで、他愛もない会話を続けて。

その内に彼は言った。「──そんな事情でオレが預かっているバーがある。店内の様子を見に行くがお前も来るか?」と。
オレは「行く」と答えた。深い事情のあるの物件の中に入る好奇心も掻き立てられて。

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■写真はイメージです。

ありきたりなバーだった。
しかし立地条件は良くて、すぐに引き取る会社は決まるだろうと思えた。

カウンター内には置きっぱなしのボトルが何本もあったのでオレ達は勝手にそれを開けた。オレはボンベイ・サファイアを。ボストン君はミネラルウォーターを。

「貴方が酒を飲まないのは車だからか。何ならオレがそれを飲んで代わりに運転するぞ?」
「オレは良いからお前は飲んでろ」
「オレより酒が好きなくせに」
「今はお前の方が飲んでいるぞ」

「どうかな? この前は銀座のママさんが貴方に挨拶していたし」とオレは言ってカウンターの椅子に座った。
ボストン君は先にボックス席の椅子に座って、その店に関する書類を眺めていた。

オレは暫く黙っているべきだったのかもしれない。
だが無言でいるのは勿体ないような気がして「話しかけても良いか?」と訊いた。
彼は「構わないぞ」と答えた。だからさっきの話の続きをした。また他愛もない日常の出来事などを。

「こんなに良い場所にあるならオレも借りたかったな」
「飲み屋をやりたいのか?」
「いいや、奴がスイーツ作りにハマっていてさ。店を出すならこんな場所も良いなと思って」
「出すつもりなのか?」
「もしもの話だ」
「スイーツなら別の場所の方が良いだろう」

ボストンはそう言って手頃な地名を2つほど上げた。それから言った。「お前はYと一生付き合っていくみたいだな」

オレは笑って頷いた。
だが何となくずっと遠い過去を思い出した。
もう戻れない時の事を。当時のオレがやらかした数々の恥ずべき行為を。夢中で彼を追っていた筈なのにオレが天邪鬼だった為に心にもない事を言ってすれ違って、ほんの一瞬で終わってしまった交わりを。

不意に寂しさが忍び込んだ。
だがオレは話題を変えた。それらは全て幻だったかのように消えて色彩すら失ってしまった事なのだから。今ではオレも滅多なことでは思い出す事もなくなって。

「もしも借りたくなったら貴方に相談するから乗ってくれ」
「良いぞ」
「ところで、予定の決まっている出張は大阪だけか?」
「来月のヨーロッパは他の人間に任せる事にしたからな」
「飛行機で行くんだよな? 気を付けてな」
「ああ、またYに土産を買ってくるぞ」
「奴にだけ? オレにはないのか?」

オレは軽い冗談で言った。
だがボストン君は少し考えこんで「どんなものが良い?」と言った。「大阪は滅多に行かないから思い浮かばない」と。

適当に酒でも買って来てくれれば良いものを。駅で売られている赤福でも大歓迎だ。

だがオレも少し考えてしまった。どうせなら前々から興味のあったものを頼んでしまおうと。それはちょっとばかり非現実的なものだし、物が物だけに変に意識して躊躇したが。

「じゃあ、指輪」
「大阪に行って指輪か?」
「ああ、大阪でしか売っていない指輪なんだ。幸運のお守りでな。知る人ぞ知るってヤツだ」
「どんな指輪だ? 行ける場所にあるなら買って来てやる」
「本当に?」
「指輪のサイズは?」
「○号。メモってくれ」
「記憶した」
「奴のはオレより1サイズ小さい」
「Yのもか」
「当たり前だろう」

オレはボンベイ・サファイアのグラスを彼のミネラルウォーターのグラスにぶつけた。商談成立の乾杯の意味で。
ボストン君は軽く笑った。「幸運のお守りが効いて、お前達2人でスイーツの店が持てたら良いな」と言って。

そうだな。
奴はともかくオレがスイーツ屋をやるなんてそれこそ非現実的だが、もしもそんな事になっても嬉しいよ。本当に、嬉しい。

その後、帰る前に一時間ほど喫茶店に入った。
そこでボストン君に勧められた焼きリンゴとサワークリームのスイーツは甘酸っぱくて美味しかった。

オレ達は他愛もない話の延長で、そのレシピを探った。
探るまでもなく簡単に作れそうだったのでオレから奴に作ってやろうと思った。
美味しく作れて奴に喜んで貰えたら嬉しい。

==========

そんな訳で、今週も早く終わって欲しいな。

今は薔薇のシーズンだとか、そういえばそんな話もした。
去年からとある場所に薔薇を見に行きたいと思っているが、果たして今年こそ行けるだろうか?

皆さんもご多忙な日々を過ごされていると思う。だからこそ休日は楽しく有意義に過ごせるように祈っています。
今週の平日が終わるまであと3日。幸運に恵まれた日々になりますように。

では、今宵も心穏やかに幸せな夢を。
おやすみ。

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