グラスの中で遊ぶ猫とそれを舐める猫
Wed.27.08.2014 Posted in 恋愛
『結果が出たよ。風邪だって』
『それだけ?』
『目眩は日射病だったかもしれないって。でも今日はなんともなかったよ :-)』

一昨日の事、昼過ぎに奴から診断結果がLINEで送られてきた。
予想よりもずっと軽い症状で安心した。
けれども奴は、その日は夕方で帰宅する事にした。奴の直属の上司にそう勧められて。

(オレが「今日は早く帰った方が良い」と勧めても絶対に首を縦に振らないくせに)

オレも出来るだけ早く帰る事にした。
午後の予定の幾つかを翌日に回して。
帰り道には形の良い葡萄を買って、それを見舞いの品にして。

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「おかえり」

奴は部屋で寛いでいるのだろうと思っていた。
だがオレが帰宅してみるとまだスーツを着たままリビングのソファで書類を広げていた。

「ただいま。身体を休ませないと駄目だろう。ずっとそうしていたのか?」
「ううん。帰ったら着替えてベッドで休もうと思っていた。でもここに座ったら猫が来て、撫でていたらここで眠ってしまったんだ。お前が帰ってくる20分ぐらい前に起きたばかり」
「ちゃんと休んでいたんだな。だがその格好じゃ寝苦しかっただろう」

奴はネクタイをきっちりと締めたままだった。
そんな状態で眠ってしまうとは、今日は(この数日は)かなりダルい思いをしていたのだろう。

オレは買ってきた葡萄を奴の膝の上に置いた。
奴は「今日もあんまり食欲が無いから嬉しいよ」と言って笑った。

この数日で奴は少し痩せた。
奴が早く元気になるにはどうしたら良いのかとオレは考えた。
暑い夏が早く終わってしまえば良いのだと思い付いたが、それはオレにはどうにもできなかった。

「……とりあえず、着替えたらどうだ?」
「そうだね。でもまだダルい。変な時間に眠ったせいかな」
「風邪をひいているしな。水を持ってくるか?」
「お願い」

猫型の製氷皿で作った氷をグラスに入れて水を注いだ。
そうやってしまってからオレは『失敗した』と思った。後から室温の水を注いだ為に猫の形が溶けてしまったから。だからそれはオレが飲んで、奴に渡す分は作り直した。今度は水の中にたくさんの氷をそっと浮かべて。

「持って来たぞ」
「ありがとう」

リビングに戻って奴に声を掛けると、奴はソファの上で身体を伸ばした。猫が伸びをするように、両手を前方に伸ばして腰を上げて。

普段、奴が猫を意識してそんなポーズを取るのは珍しくない。
だがその時はスーツ姿でしているのが珍しかった。

仕事用のきっちりとした格好をしているくせに砕けた態度をしていて、それが何やら艶めかしく思えた。ストイックな色気を感じたが故に、少しその格好を乱してやりたくなったという感じだ。

「まだ眠気があるか?」
「いや、伸びをしたらスッキリした」
「猫の伸びの効果か」
「前にも言ったけどヨガのポーズでもあって効果があるんだよ。水、ありがとう。冷えてる?」

奴はグラスを受け取ろうとしてオレに手を伸ばした。
だがオレはグラスを奴の顔前に持って行って、「猫の氷だ」と、それを見せつけた。

「可愛いね」と奴は言った。
「冷たいのが欲しいならこれを舐めた方が早いぞ」とオレは言って、奴が舐めやすいようにグラスを斜めに傾けた。

奴はぺろりと舌を出して微笑んだ。
そしてカラリと音を鳴らしながら氷を舐めた。

奴は猫になったつもりだったのだろう。
だがそれは猫にしては淫らな舌だった。もっとも猫の舌も色っぽいので似たようなものだったのかもしれない。行灯の油を舐める猫はきっと人間よりも妖艶な筈だ。だが少なくてもオレは本物の猫に舐められて欲情を覚えた事は一度もない。

「今のその舌、指で摘んでやりたかった」
「それは猫いじめだよ」
「そうだな。貴方が元気だったらいじめたのに」

恐らくオレは物欲しそうな顔目をしていたのだろう。
奴は再びカラカラと氷を舐めて、それからオレの後ろ首に手を回してキスをした。

オレが奴をいじめる代りに、奴はオレの舌に甘咬みをした。
冷たい歯は象牙質の硬さと滑らかを際立たせ、オレが獣(猫)に噛み付かれている妄想を掻き立てた。

気持ちが良かった。
キスが長くなれば舌や歯の温度は上がり、それはそのまま抑え切れない情欲とリンクした。

「R、オレに鳴いて欲しい?」
「鳴いてくれ。さっきの猫のポーズで」
「ふふ、良いよ。でも服を脱がさないで。お前も脱がないで」
「判った。貴方は病み上がりだからその方が良い」
「でも優しくしなくて良いよ」

交換条件のように今のセックスの気分を互いに囁き合った。
オレは暫し、奴の身体を気遣うのを止めた。今は奴の望む通りに、荒々しく執拗に欲情を突き立てる事に没入した。

ソファに身体を沈めた時、不意に、グラスの中の猫は溶けてカランと鳴った。
情事が終わったらまた水を作り直さなくてはならないだろうとオレは思った。

==========

「冷たくて美味しい。でも今度の氷は猫じゃないんだね」
「猫のはさっき全部使ったからな。それより具合は平気か?」
「さっき良く眠ったから元気だよ」
「どれ、熱」
「猫のポーズもしたから大丈夫」
「最強だな、猫のポーズ」

事の後、オレは奴とそんな話をしながら思った。
そろそろ夏は終わる。
夏が終わったら、もっと少し2人だけの時間を作ってどこかに行こうと。

秋には待ち遠しいイベントが幾つかある。
オレはそれを楽しみにしているが、夏の暑さに疲れた奴もきっと楽しみにしてくれているだろう。

秋の空が懐かしい。
川辺を飛んでいるトンボを追いかけたり、風にそよがれるススキの群れの中を歩きたい。
そんな風に思うのは、この夏が忙しすぎたせいだろうな。

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という訳で、皆さんもお元気か?

東京は急に寒くなったが、体調を崩してないか心配だ。
今週はずっと雨が続くようだが、このまま涼しい秋になってくれたら良いのにな。来週には天気が回復してまた30度を超えるみたいだが(泣)

奴のように暑さに伸びたタレ猫になりませんように。
週末もまた、皆さんの健康と幸運を祈っています。

では、今夜も心楽しくステキな夢を。
おやすみ。

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