馬と縄 .3
Fri.15.08.2014 Posted in SM・フェチ
奴はオレの両手首をネクタイで縛った。
それは恐らく『手錠』の代わりだった。

そしてそのネクタイの端を掴んでベッドルームへと移動した。
どうやら舞台は『満員電車』から『取調室』へと移った様だった。

「座りなさい」

奴の口調が変わった。
口調だけではなく顔付きや仕草も。

それは、ここから奴が主導権を握るシーンになる事を意味していた。派手な化粧、いかがわしいコスチューム、悩まし気ではあるが冷たく見下す目。それらに似合いのイカレた取り調べをオレにするシーンに突入すると。

オレはベッドの脇にあるソファに座った。
本当は取調室にあるような簡素な椅子と机が欲しかったが仕方がなかった。
そして「電車の中じゃ恥ずかしいからここに誘ったのか?」と薄笑いを浮かべて言えば即座にビンタが飛んで来た。奴の骨ばった大きな手でピシャリと打たれて頬が痛んだ。

「怖い婦警さんだな」
「尋問を始めるわ。質問された事以外は何も言わなくて良いの。まずは身体検査だから立ちなさい」

奴は片手でオレの頬を掴んだ。
奴の口調はすっかりコスチュームに似合ったものになっていた。奴は日本人の男よりもずっと低い声をしているが、その声で女性的な言葉を使うと妙に艶かしくて変態臭くなる。

オレはゾクゾクしながら眼球だけを動かして奴の顔から足先を眺めた(上を向かされていたので実際には腰までしか見られなかったが)
理想通りの変態婦警だった。どぎつい香水とエロティックなガーターストッキングとピンヒールがないのは惜しかったが、口紅を厚塗りした唇とシャドウを塗りたくってキツく強調された目だけでイかされそうだった。

「たった今座らせたくせに立てって? 手際の悪い婦警さんだな」

そんな生意気な発言をすれば2度目のビンタが飛んで来た。いや、左右の頬を往復したから3度目もだ。

余計な事を言うから……と思われるかもしれないが、故意に奴(サディスト)を怒らせる発言をしてプレイを盛り上げるのはオレ(マゾヒスト)の役目だ。SMは小説や映画を創作するようにアドリブで状況を盛り上げた方が面白い。M(受け身)だからマグロのようにボーっとされるがままではS(責め身)のテンションを下げるばかりとなる。

オレは立ち上がった。
すると奴は品定めするようにオレをじっと見詰めて、そのまま片手でオレのシャツのボタンを外していった。

良い雰囲気だった。
だが、どうせならもっと過激にしてくれても構わなかった。近頃は多忙のせいでストレスが溜まりまくっていたので、頭の中を壊してくれるような異常な状況を楽しみたかった。

だからオレはもっと『余計な事』をした。
拘束された腕で奴の片腕を掴んで無理矢理に胸に手を突っ込んだ。すると奴は反射的にオレの襟元を掴んでシャツを力いっぱいに引き裂いた。

ボタンが何個か弾け飛んだ。
ボタンが縫い付けられていた辺りの布は少し裂けてもう着られる状態ではなくなった。

オレは身が震えるような歓喜を覚えて下半身を勃起させた。
服を引き裂かれる興奮はたまらなくて、もっと乱暴な事をされたくなった。
乳首を優しく感じさせてくれるような愛撫は無用だった。オレは下衆な犯罪者なのだから人間以下の酷い扱いをして欲しくなった。

「優しく尋問する必要はないみたいね?」
「激しい方が感じるだろう?」
「尋問もいらないみたいね」
「ああ、早くアンタに挿れたい」

オレは馴れ馴れしく奴にキスをしようとした。だが奴はそれを躱して、オレのシャツを乱暴に(縛られた腕の位置まで)脱がした。

「あとは自分で脱ぎなさい。下着もよ」
「手錠(ネクタイ)が邪魔で脱げない」
「ナイフを持ってくれば良かったわ」
「なくて良かった。きっと腕まで切られた」

奴は室内を見渡して『何か使えるもの』を探した。しかし見付からなかったので、オレの腕を縛っているネクタイを解いて、今度はそれをオレの首に巻き付けた。

それは『いくら引っ張ってもそれ以上は締め付けない縛り方』で作った首輪だった。
オレは犬になった気分で奴の命令に従った。まずは中途半端に脱がされたシャツを完全に脱いで、それから靴下と靴を……脱ぐつもりだったが、奴に「靴は履いたままでズボンと下着を脱ぎなさい」と言われたので、ズボンと下着を脱いで靴下と靴だけを履いた格好になった。

「あはは、情けない格好ね」

奴は笑った。
オレも恥ずかしい気持ちを誤魔化すように笑った。
しかしそれでこの場が和む筈はなく、奴はオレの足を蹴飛ばした。「床に手を付きなさい。馬みたいに」と笑顔を消して言った。

犬ではなく馬になるように命じたのは欧州の貴族趣味なSMに憧れる奴の趣味だったと思う。しかしそれ以降の行為は残酷でえげつなかった。

奴は四つ這いになったオレの顔面に爪先を突き出した。
オレはそれを『主の足にキスをしろ』の意味だと受け取って唇を寄せた。しかしその途端、奴は足の裏でオレの頬を踏み付けた。吊り上がった大きな目に悪趣味な笑みを浮かべて。

「勝手な事をしちゃダメじゃない」
「口で言ってくれないと判らない」
「何も言われなくても察しなさい」
「無理だ」

そして今度はオレの背中を踏みつけながら力いっぱいに首輪を引っ張った。オレが苦痛に声を漏らせば「馬は人間の言葉をしゃべらないのよ」と言ってオレの背中に跨った。

背中にズシリと奴の体重がのし掛かった。
奴が皮膚を突き刺すようなピンヒールを履いていないだけマシだったのかもしれない。何しろ奴はオレの背中の上で、ドスドスと尻をバウンドさせたり背中に両足を乗せて全体重を掛けたりと、やりたい放題だったから。

「歩け。遅いわ、走りなさい!」
「重いから無理だ!」
「またしゃべったわね? 馬の自覚のない馬なんて変なの。そうだ、こうしてあげる」

奴はオレの背中に跨ったままオレの首輪(ネクタイ)を外した。そして今度はそれを猿轡のようにオレの口に噛ませて背後からグイグイと引っ張った。

「ふふ、手綱が出来たわよ。あはは、お馬さん、良く似あってるわ。さあ走って」

奴のサディスティックなテンションはオレを貶めれば貶めるほど上がった。
オレの背中の上で「右へ行け、やっぱり左だ。ほら止まって後ろを向け」とメチャクチャな命令を下しながらオレの尻を手で叩いた。

「少しは自分の立場が判った?」

奴はオレの顔を覗き込んで悩ましく厚い唇を尖らせた。
オレは息を切らして額に汗を浮かばせていた。おまけに口は括られていたし、背中に重いものを乗せて固い床を長く歩いた為に膝はジンジンと痛んでいた。

だからすぐに返事が出来なかったのだが、奴はそれがお気きに召さなかった。「そろそろ許してあげようかと思ったのに返事が出来ないのね?」と言って、オレの背中から降りて、オレが脱いだズボンか黒革のベルトを引き抜いてそれでオレの尻を軽くペチペチと叩いた。……どうせ初めから許すつもりなどなかったくせに。

「もっと躾けてあげる。馬の以下の家畜としてよ。そうね、まずは……飼い主であるアタシの匂いを覚えなさい」

奴はベッドに座ってオレをその前まで四つ這いで歩かせた。そして再び足をオレの顔に寄せた。今度はさっきとは違って鼻をふさぐように。
オレは奴の命令通りに素足の匂いを嗅いだ。さっきまで息切れしていた事も忘れて、その汗と体臭が混じった独特の匂いを放つ足に官能を掻き立てられながら。

そんな事をしていればフェチストであるオレは匂いを嗅ぐだけでなく無性に舐めたくなってきた。
勝手な事はするなと奴に命じられていたが、あれだけ頑張って馬になったのだからそろそろこれぐらいのご褒美は良いだろうという甘い考えを浮かばせて。

オレは誘惑に負けて奴の親指を舐めた。
決してご馳走とはいえない味なのに(埃すら付いていて)、それが強烈な媚薬であるかのように一気にオレを興奮させた。

しかし案の定、すぐさま奴の叱咤が飛んで来た。
「馬の鳴き声も出来ないくせに」と言って、黒革のベルトでオレの背中を強かに叩いた。

それから先は更に過酷な馬の調教だった。
奴は中世の勇ましい姫君にでもなったつもりだったのか、鞭を片手に手綱を握ってオレを厳しく躾けた。「ヒヒーンと鳴きなさい。そして走れ!」と命令しながらオレの尻を力いっぱいに打ちまくった。

尻を丸出しにした靴下と靴だけの格好でヒヒーンと鳴く。それは冗談でやるなら笑えるだろうが、冗談では済まされない状況でやってはまったく笑えなかった。
ひたすら羞恥と苦痛に襲われて本気で許しを乞いたくなった。たかが『ごっこ遊び』なのだから辛いなら止めれば良いのに、その判断もできないほど真剣になって。

「アタシと遊びたいんでしょう? そんなんじゃファックは無理だわ。ほら、鳴きなさい」
「ヒ、ヒーン、ヒヒーン」
「あら息切れしてる。またアタシの足の匂いを嗅がせてあげるから元気になりなさい」

尻は真っ赤に腫れ上がっていたと思う。炎が点いたように熱くなっていた。
何度も同じ箇所を打たれると次第にそこは麻痺してくるものだが、それと同時に発狂したように高揚して「もうどうにでもしてくれ!! もっと!」と自ら苦痛の中に飛び込みたくなるから不思議だ。

「もっと大きく鳴け。そして走れ!」
「ヒヒーン!」
「あっはは! 良いぞ、もっとだ!」

奴はすっかり奴隷馬に乗る女王様だった。
そしてオレは馬奴隷としてほぼ完成していた(ほぼ、と付けたのは一生完成しないからだ)

奴はようやく満足した。
「よし、どうどう」と言ってオレの背中から降りて、真っ赤に腫れた尻を撫でた。その生々しい感触を楽しむように。

奴が降りた途端、オレはその場で身体を崩した。
一瞬、勝手にそんな事をしてしまった事を責められるのではないかと思ったが、奴はオレを咎めたりはしなかった。

「躾が効いて少しは良い子になったみたいね。ちょっとだけ可愛がってあげたくなったわ」

奴は優しげな声でそう言ったが、サディストの『可愛がりたい』というセリフほど信用できないものはなかった。絶対にその真逆の事をされるに決まっているのだから。

「ご褒美にファックか?」

どうせならもう徹底的に好きにすれば良いと、オレはそんな気分でまた減らず口を叩いた。
すると奴は笑った。オレの言葉を無視して、「ここにこんなものがあるわね。取り調べの道具にしょうかしら」と言って、冷蔵庫の横にある販売機を指さした。

それはラブホテルに良く置かれているアダルトグッズの販売機だった。
中には、ローション、数種のローターとバイブ、コンドーム、女性用ランジェリー、衛生用品、酒のツマミなどが入っていて、小銭を投入して欲しい商品のボタンを押して購入するものだ。

取り調べの道具? これが?

オレは首を傾げた。
まさかローションを自白剤ということにして無理矢理に飲ませるような事は……などと想像したら、途端に嫌な予感がした。

「お前にどれを使おうか?」

そう言って奴は販売機の前にしゃがんだ。
そしてこんな提案をした。「どれを使うかお前に決めさせてあげるわ。目隠しをして好きなボタンを押すのよ。出てきたものを使うから」

オレはギョッとして販売機の中身の確認をした。

ローターとバイブは絶対にマズイと思った。女性用ランジェリーも絶対にやめて欲しかった。
しかし今の奴なら、例え一番無難なピーナツ類(酒のつまみ)を当てたとしても最悪な使い方をしてくれるような気がした。

<続く>

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毎度のことながら展開が遅くて申し訳ありません。
連載は5まで続きそうです。

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