それでも憎めなかった日々
Sat.31.03.2012 Posted in 恋愛
真夜中の0時過ぎ。
彼の深いため息が耳に届いた。

そして彼は言った。「気晴らしに出掛ける。支度をして」
ハナからオレの都合や気分など訊くつもりもなく、オレが従うのは当たり前のように。

もっともオレは、このオレをそんな風にを扱える男が好きだからこそ彼の傍にいた。

彼の指示に従って車を飛ばして、ある地下へと潜るバーに到着した。
そしてガラの悪いのと上品なのがないまぜになったカウンター席に座ってシャンパンを注文した。

「乾杯」

彼はニッコリと微笑んだ。

「乾杯」

オレもグラスを持ち上げて、彼のグラスに軽く当てた。

そして一気に盃を飲み干し……と思った矢先、彼はいったん口に寄せたグラスをこちらに向けて、グラスの中のシャンパンをバシャッとオレの顔にぶちまけた。

それを見ていたマスターがクックックと声を殺して笑った。
オレは唖然としたが、彼ならいきなりそんな事をやり兼ねないと諦めたように悟って、自分のグラスのシャンパンを大人しく飲んだ。

どうせ「なんでこんなことをした?」と凄んで訊いた所で、「前から一度やってみたかったんだ」ぐらいの言葉しか返ってこないのは目に見えていた。

彼はキャハハハハハとけたたましく笑い、「顔射、顔射!」と騒いでいた。

ニッコリと微笑む彼の笑顔は憎たらしくて可愛かった。
だが、金切り音にも似たキチガイ笑いは神経を逆撫でするばかりだった。

オレは彼と別れる事を前々から考えていた。
その晩はお気に入りのサングラスとニットをシャンパンまみれにさせられた事もあって、車に戻ったら即刻さようならを言ってやろうと思っていた。

だが車に乗れば、彼は猫のように可愛らしく甘えてきた。

「愛してる、大好きだ。お前がいないと死んじゃう。お前と3日セックスしないとダメだ。すぐにセックスして、お願い」

と、早口で自分の脆さをまくし立てて、身体を震わせて必死にオレにしがみついた。

単に当時の彼は情緒不安か躁鬱だったのかもしれない。
あるいは計算ずくだったのかもしれない。

どちらにせよ、そんな彼の極端な激しさを、オレは愛していた。
そして自ら好んで、その激しさに振り回される事を選んだ。

けれど、彼との付き合いもそう長くは続かなかった。
破局の原因は、詳しい事は伏せるが、オレが自分の人生を考えた直した事に決定的なすれ違いが生まれた。

その後、彼と連絡を取り合う事は無かった。
互いに交友関係は変わって、その内に噂話も聞かなくなった。

だが数週間前、
それほど親しくもない共通の知り合いを通して、彼がオレとコンタクトを取りたがっているという話を聞いた。

オレは彼に電話番号を伝えた。
するとその日の内に彼から電話が掛かってきた。

「何か困ったことでもあったのか?」とオレが訊くと、
「別に、ただ○○でRちゃんの名前を聞いたから、久しぶりに声が聞きたくなっただけ」と彼は答えた。

そして、「もう聞いたから良いや。じゃあ」と言って、即、電話を切りやがった。

相変わらず憎たらしい男だと思った。
あんな一方的で素っ気ない態度をされると、まるでオレが取り残された気分になって寂しくなる。
たとえオレが彼に一切の未練がなくても、そんな錯覚を覚えさせてしまうのが、彼の上手いところだ。

それっきり電話が来ないのを見ると、本当にちょっとだけ興味が湧いただけだったようだ。
普通なら戸惑いを覚えるような事を恥じらいもなくやって(言って)しまうところに彼の強みがある。

もっとも、『取り敢えずメチャクチャな事でも自分の願望をそのまま相手に言って(やって)みろ、意外な事こそ案外通ってしまうから』などという無責任な法則を守っているのは、このオレなんだがな。

今後またコンタクがあるかどうかは判らないが、末永い幸せを祈ってやろう。
普段の彼の働きぶりを伺えば、オレが祈るまでもなく強運に守られているみたいだけどな。

キチガイなキャハハ笑いをする彼は、それでも昼間は真面目で頼もしい公務員なんだ。
そんな彼を思い出せば皆さんにこう言いたくなる。

『貴方の周囲にもきっと隠れ変態がいる!』と。

いや、でも詮索はしないようにな。
オレを含めて彼らは隠しながら楽しみたいのだから(笑)

という訳で、薬にも毒にもならないエントリーにて失礼を。
今夜はフェチ話を更新するぞ。将来SM作家を目指してな。

では、また夜に。

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