朝日が登るまで貴方の幸せを祈ろう
Thu.15.01.2015 Posted in 恋愛
奴の髪からはいつもとは違う洗髪料の香りがした。
遠い国からようやく帰って来てくれたのだという実感が沸き、懐かしさと喜びを感じずにはいられなかった。

駐車場に停めた車に奴を乗せる為にオレは助手席のドアを開いた。
その時、もう一度「おかえり」と言って奴にキスをした。

助手席には奴の好きな花束を置いていた。
奴は車に乗り込むと花束を抱き締めて微笑んだ。「綺麗だ、ありがとう!」と言って。
オレは奴に笑顔で喜んでもらえたのが嬉しくて、「どういたしまして」と答える代わりにもう一度キスをした。

奴を家まで送ったらオレは会社に戻らなくてはならなかった。
奴と共にオレも帰宅しようかと本気で考えたが、それはダメだと奴は言った。
「つれない事を言うんだな」とオレが冗談で言ったら(本当は賛成してもらえなくて少し拗ねた)、奴はオレの左腕に顔を擦り付けて「待っているから早く帰って来て」と言った。

会社に着いても仕事は一向に捗らなかった。
オレは仕事を放棄して、どうやって早く帰宅する為にスケジュールを誤魔化そうかと思案に暮れた。

予定よりも2時間も早く会社を出ることに成功した。
自宅に帰る前に奴の好きな焼き菓子とワインを買った。既にワインもシャンパンもお菓子も料理も準備していたが、それでも手ぶらで帰れるほどオレの嬉しさは半端なものではなかった。

「ただいま」

オレは大きな喜びと多少の不安を抱えて玄関のドアを開いた。

「おかえり!」

奴はすぐに玄関に来てくれた。
『2時間早く帰る』とオレがLINEを送ったせいで急いでシャワーを浴びたのか、湿った髪をして、タオル地のバスローブを着て、オレを抱き締めて「待っていたよ」と言った。

まずはシャンパンで乾杯しようと思っていた。
だが奴に力強く抱擁されたらもう身体を離すのが嫌になって、そのままキスをしながら寝室へと向かった。

オレは一気に欲情した。
だが奴は疲労の為か身体を反応させてはいなかった。
だからオレは「疲れているのに焦ってすまない」と言って中断しようとした。だが奴は「続けて欲しい」と言ってオレのネクタイを外した。

「本当に良いのか? 疲れているんじゃないか?」
「欲しいんだ、お前が好きだ。今すぐに欲しい」
「辛くなったら言うんだぞ」

オレは戸惑いを残したままインサートした。
奴はとても声を上げた。
それは確かに苦痛の声ではなく快楽の声だったが、相変わらず奴の身体はエレクトせずに、ただ濡らすのみだった。

疲労ではなく精神的なものが原因してそうなっているように思えた。
オレは何度か奴の様子を伺って中断しようかと囁いたが、その度に奴は大きく首を横に振って嫌がった。オレの首や腕を掻き毟るように腕を回して、続けて欲しいと言って。

奴のそんな姿が狂うほど可愛かった。
そしてそんなやり取りを経て、オレは何となく奴がどんな気持ちでいるのかを察した。
だから奴の気の済むまで(オレが執拗に攻め続けた末に射精するまで)続ける事にした。想いの滾りを露わにして激しく。だが言葉はずっと優しいまま、愛していると何度も囁いて。

暖房が少し効きすぎていたせいもあって互いに汗まみれになった。
奴の髪はボサボサで、眉間にはシワが寄って、頬は紅潮して、腹部はベタベタで、射精はしなくても何度もイったような姿をしていた。

奴は自分の腕で目元を覆っていた。
オレは奴が最中に涙を流していた事に気付いていたが気付かぬふりをしていたので、事後もそれは汗であることにした。

「疲れただろう? すごい汗だ」
「目に汗が入ってしみる」
「お湯に浸したタオルを持ってくる」
「早く戻って来て」
「ああ」

オレは蒸しタオルの他に冷たい炭酸水も持って寝室に戻った。
奴は白い身体を伸ばしてボンヤリとしていたが、オレが身体を拭い始めると腕を持ち上げてオレの頭を撫でた。

「気持ち良いか?」
「うん。さっきも気持ち良かったよ」
「そうか? エレクトしなくても?」
「うん。中が気持ち良かった。激しく突かれている時に中でイっていた(ドライオーガズムの事)」
「それなら良かった。そうかとは思っていたが……そういうことを何も言ってくれなかったから心配していた」

オレは本当に不安だったから情けない顔をしてそんな事を言ってしまったのかもしれない。急に奴は微笑んでオレを抱き締めてこう言った。「何も言わないで夢中で感じていたかったんだ。ごめんね」

1ミリもの息を漏らさないぐらい相手(快楽)を感じていたい時はある。
実はその晩のオレも同じだった。
途中からはほとんど容赦なく夢中で奴を抱いていた。「本当に苦しくはないか? 貴方も感じているか?」と訊いたりもせずに。奴に何か言われて中断させられるのが嫌だったから。

「向こうに居る時にお前に会いたかった」
「ごめんな。次は必ず一緒に行く」
「約束してくれる?」
「喜んで」
「ありがとう。本当に嬉しい……」
「大丈夫だぞ」

冷えた炭酸水を飲んで落ち着いたつもりだったが、その後また奴は涙を零した。
幼い頃から抱えてきた不安と、祖母さんの身体を案じる不安。帰省中はその2つと面と向き合って、たとえ幾つかの楽しい出来事があっても安堵できなかったのだと思う。

オレは心から誓った。
もう二度と、奴を一人きりにしてそんな思いをさせやしないと。
次に奴が帰省するのはとても悲しい事が起きてしまった時かもしれないから(そうならないように2人で祈っているが)、奴が泣き崩れてしまっても支えていられるように必ず傍に居ると決心した。

ベッドで再会の一時を過ごした後、オレ達は寝室のドアを開けてリビングに移ろうとした。
その時、猫様が駆け寄って来た。
猫様は奴が出てくるのをずっと待っていたようだ。
オレは思わず謝った。奴を独り占めにしてすまない、と。

「それにしても良くこんなに早く帰れたね?」
「色々と嘘を言ってな。それより、ずっと起きていたのか? 眠いだろう?」
「少し眠るつもりだったけどシャワーを浴びたら目が覚めちゃった。猫も遊んで欲しがっていたし」

そういえば奴の髪がいつもの香りに戻っていたことに気付いた。
もしかすると奴は帰国するなりまた慌ただしく帰省の話しをするのではないかと心配だったが、少なくても今はそれはないようで安心した。

改めてシャンパンで乾杯した。
用意していたブランデースプリッツァー(フルーツを漬けたブランデー)のビンも開けて、シャンパンを飲んだ後にその中の苺を奴の口に運んだ。

「美味しい! そうだ、花束はそこに飾ったよ」
「猫のミトンを見せてくれ。楽しみにしていたんだぞ」
「あはは! 良いよ、待ってね」

奴の猫のパペット劇場が始まった。
たまにオレの鼻先や頬を突きながら帰省中の思い出を語り始めた。
悲しい出来事もあったが、中には思いがけない嬉しい出来事もあって、奴はそれに少し涙ぐみながら喜びを語った。

「それだけでも帰ってみて良かったな」

オレはそう言って奴の肩を抱いた。
奴は笑顔で「そうだね」と答えた。「それでおばあちゃんにいっぱいお年玉を貰ったんだよ!」などとも言って。

(なかなか大きなお年玉で、もう人にあげるばかりとなったオレは羨ましくなった笑)

「そうだ、貯金箱を買っておいたぞ」
「ありがとう。一緒に貯めて結婚資金にしようね」
「結婚資金のだったのか?」
「違うの?」
「今年の旅行の小遣い用かと思っていた」
「新婚旅行のだよ」
「そうだったのか。じゃあもっと大きいのを買えば良かったな」

その後は奴の気持ちもすっかりと落ち着いて、通常のオレ達の会話になった。

2人で一枚の500円玉を持って貯金箱に初投入したり、今更だが「あけましておめでとう!」と言って今年もよろしくのキスをしたり、オレが試作を重ねて作り上げたホット・ココアスキーを淹れたりして(週末にレシピを公開します)、奴が自然に眠りに就いた朝方まで再会を楽しんだ。

その晩は、オレはずっと奴に触れていた。
撫でたり抱いたりしていないとまた奴が悲しそうな顔をしそうで、そうせずにはいられなかった。

奴が帰って来て今日でもう一週間となる。
だが奴はまだ不安定な気持ちを引きずっている部分があって、あれから少し夜更かしになった。

オレと気ままにゴロゴロしながら映画を観たり音楽を聴いていると落ち着くそうだ。
先日は珍しく2人でテレビドラマを観た。そんな事は今まで一度もなかったので(互いにテレビを観ないので)、新鮮といえば新鮮だった。

「今度、レンタルビデオに行きたい」
「良いぞ。もう会員の有効期限が切れているから入り直す」
「ありがとう。何作か観たい映画があるんだ」
「一緒に観よう」
「映画鑑賞用のワインが欲しいね」

それでもそんな風に穏やかに過ごしてきたので、日に日に奴の気持ちは安定して来ている。
まだ完全に元に戻るには少し時間が掛かるかもしれないが、オレは一生奴の傍にいると決めたのだから、焦らずに悠長に、今は今の奴のペースに付き合いたいと思う。

おまけに奴は体調を崩してしまった。
もうほとんど治ったが、奴にしては非常に珍しいぐらい熱を出した。

だからこの数日はブログを休んでいた。
もっともオレが奴とゆっくりと過ごしたかったからという理由もあるが。

しかし前にも書いたが、オレは書かなくなるとまったく書けなくなる。
だからブログを書く習慣がなくならない程度に、今日からは短信であっても出来るだけ毎日更新しようと思います。本当に短かな短信の日があってもお許し下さい。

そんな訳で、今後もお付き合い頂けたら嬉しいです。
今日も長くなったが、最後まで読んでくださってありがとうございました。

おやすみ。
皆さんが楽しい夢を見られますように。そして明日もたくさんの幸運に恵まれますように。

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