眠れない夜の右手の習慣
Tue.30.09.2014 Posted in 恋愛
実家に帰った時の事。
枕が変わると眠れなくオレはその晩も眠れなかった。

そこでオレはオナニーをした。
それが最も手っ取り早い睡眠誘導手段であるから。
市販の眠剤を用いることも出来たが、あれを使うと眠気が酷くて翌朝起きれなくなるので、身体に優しい方法で眠りにいざなわれる事にした。

翌朝、オレは奴に言った。
「貴方って本当に寝付きが良いな。オレは眠れなくてオナニーをしてようやく寝たぞ」

すると奴はこう言った。
「また? 前から思っていたけど、お前はずっとそんな感じなの? 友達の家に宿泊する時も?」

オレは正直に答えた。
普通の友人の家でもオナニーをした事があると。
そして更に馬鹿正直に、その恋人でもなんでもない友人とセックスに及んでしまった事もあったと。

「浮気したの?」
「いや、誰とも付き合っていない時の話だ」
「……ふうん?」
「本当だ、信じろ」
「判ったよ。それで、どういう経緯でセックスに? お前がオナニーをしているのがバレて?」
「ああ、オレは友人の隣で寝ていて、背中を向けてしていたんだ。だが腕の動きで気付かれたんだな」
「気付かれたんだなって、そんなの当たり前じゃない。お前の事だから見て欲しくてしたんじゃないの?」
「ないない、さすがのオレでも普通の友人相手に露出マゾになる気はない」

奴は深くため息を吐いた。
『信じられない、この人って変態じゃない?』といった顔つきでオレを見ながら。

ここでしっかりと言っておくが、そのオナニーはオレにとって睡眠誘導手段に過ぎなかった。
友人を誘うつもりはなかった。結果的にはそうなってしまったが、誘いたいならもっと単刀直入に誘う。相手がまだ眠っている早朝にモゾモゾと仕掛けたりはせずに堂々と。

そもそもオレは露出では興奮しない。
人目があると気が散って萎える。
電車や夜道でチンコを出したいとは思わないし、公開セックスをして誰かに見て欲しいとも思わない。

しかし奴にはそれが理解できないようだ。
『眠れぬ夜にはオナニー』というのは定番だというのに。
……もっとも、それが友人宅でとなると……良く考えてみれば理解できない方が当然だな(汗)

「考えたが、やっぱりオレがおかしいな」
「うん」
「貴方は友人の家で一度もオナニーをしたことはないんだな?」
「ないよ」
「そうか」
「お前ももうしちゃダメだよ。したらお尻を斧で割るよ」
「怖い事を言うんだな」
「当たり前だ。オナニーはオレの前でだけするように。一人でするのも禁止」
「一人でもダメなのか!」
「心配だからダメ。それと、過去の事でも他の人とセックスした話はもうしないで。嫉妬する」

奴は軽くオレの首を締めて、それからオレを抱き締めた。
オレは奴に申し訳ない事をしたと反省しながら奴を抱き締め返した。

何年経っても奴の嫉妬心と独占欲は消えないらしい。
しかしそれはオレも同じなので奴が「一人でオナニーするのは良いよ」と命令を解いてくれるまでは奴の命令を厳守することにした。

そうした方が良いよな?

と、オレが奴の背後のダンボールに入っているシロ子に視線を向けると、シロ子は「あたりみゃえだ」と呆れたような顔をした。

2014_0928_1.jpg

シロ子にも呆れられるとは情けないぜ。

そういえば、少し前のエントリーに書いた『シロの恋』は散ってしまったようだ。あの三毛子が妹宅に来なくなってな。

どうやら近所の一軒家に住む猫好きさんが、妹がやっていたご飯よりももっと美味しいご飯をあげるようになって、三毛子はすっかりそちらの通い妻になったようだ。

「あたしも三毛ちゃんの為にいろんなご飯を買ったのに!」

と妹は悔しがっていたが、シロ子はもっと悔しい……というか寂しい思いをしただろうな(汗)

その話を奴にしたら、奴はシロ子に顔をくっつけて、「シロ子にはボクがいるよ。ボクはシロ子を愛しているからね」と言った。
しかしシロ子は奴の鼻先を手のひら(肉球)でぎゅーと押し返した。『無用』とクールに拒むように。

「シロちゃん格好良いね。ヒゲも立派だ」
「オレの猫だからな。オッドアイで美形だし」
「妹さんの猫でしょ?」
「シロ子の肥満の責任は飼い主のお前にある! とかいつも貴方は言ってるじゃないか」
「それはお前を虐めたいからだよ」

秋になって奴のサド心も豊作なようだ。
もっとも奴はちゃんと判っている。オレもシロ子の飼い主であり、シロ子を可愛がっていると。

もしかするとシロ子はまだ、急に来なくなった三毛子をまだ待っているのかもしれない。
だがその寂しさを埋めてやりたいと思っている人間(下僕)は何人もいるのだから、それでも幸せな日々を送っていると信じたい。

そうそう余談だが、
その後、オレ達はダンボールのシロ子を撫でながら秋のレジャー計画を建てた。

「10月のその日に連休は取れそうか?」
「まだ判らないんだ。○○さんと○○さんの都合次第だ」
「そうか、今年はハロウィンイベントに参加したいよな。去年は出来なかったから」
「したい。最悪、日帰りになっても良いから行きたい」
「どうせならランドとシーの両方に行きたいな。ランドでハロウィンのダンス、シーでジェラトーニ」
「行きたいね!」

さて、どうなることやら?
はっきりと予定が判るのは次の日曜日だ。
何とか奴も休日が取れるように、今週は仕事の合間に神社で手を合わせてこよう。

==========

という訳で、
早いもので明日で9月は終わりだ。

皆さんも慌ただしくお過ごしだろうか?
せっかくの秋なので心のままに過ごしたいものだが、なかなかそんな贅沢な時間は持てないものだな(笑)

それでも皆さんの毎日が豊かであるように祈っています。
健康であり幸運でありますように。

では、今夜も心穏やかに楽しい夢を。
おやすみ。

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愛の重さを賭けた勝負
Sun.28.09.2014 Posted in 恋愛
奴とレストランに行った時の話だ。

2014_0927_1.jpg

ワインを飲みながら互いの『食事に於ける癖』の話になった。
例えば……。

「お前は最初にサラダをタップリと食べるね。一番好きなのはシーザーサラダだ。そして食後にはオリーブをつまむ」
「良く見てるな?」
「そりゃあね」
「オレも貴方の事は良く判ってるぞ。メインが来るまでにパンを2つ食べる。そして食後に珈琲を飲む」
「食後の決まりならお前は必ずデザートを食べる。フレンチならプティフールも。最後に注文するのは珈琲ではなくて紅茶だ」
「判りやすいな」

そんな具合に。

そして、そんな話をしている内にゲームをする事になった。
今日はコース料理ではないので出来た順から注文した料理が運ばれてくる訳だが、互いに相手がどういう順序で料理を食べるのかを推理しようというゲームだ。

まずは料理を注文する。
シーザーサラダ、オリーブ、クリスピーポテト、プロシュット・クルード(豚のモモ肉の生ハム)、スパイシーシュリンプとモッツァレラのピッツア、リブアイステーキ。

そして料理が来る間に推理をして、それをメモに控える。
ビールとワインは除いて、奴(オレ)は1番目にどの料理を口に運ぶか? 2番目は? 3番目は? と。

多く推理を当てた方を勝者とし、敗者は勝者のわがままを聞かなくてはならない。ただし高価なものを買わせるのは禁止。

2014_0927_2.jpg

「さあ、注文は終わった。推理しよう」
「OK。あ、ピザは何を注文したんだっけ?」
「もう! ピザはピザで良いよ。シュリンプとか上に乗っている具まで正確に書かなくても」

オレ達は暫し口を閉じてメモ(会社の刻印入りの)にペンを走らせた。
その途中、オレが何気なく顔を上げると、奴はこちらを見てニッと笑った。どうやら既に勝利を確信しているようだった。しかしオレも負ける気はなかった。

「書けたぞ」
「オレも」
「じゃあメモを伏せよう。伏せたらもう書き直しは出来ないが、良いか?」
「良いよ」
「余裕だな」
「どちらが勝っても良いと思っているよ。この楽しいゲームに乾杯しよう」

オレ達は良く冷えたレーベンブロイで乾杯した。
そして一気に一杯目を飲み干して、酔った様子を装いながら、互いに相手への想いの深さを自慢するように語った。

「オレの方がお前の事を良く知っている」
「いや、オレの方が貴方の事を良く見ている」
「そんなに自信たっぷりに言って良いの? オレは自惚れるよ」
「ああ、自惚れてくれ。これから全問正解して見せるから、そうしたら付け上がって良い」
「判った。お前が全問正解したら思いっきりわがままを言ってやる」
「良いぞ。いや、ちょっと待て。全問正解したらオレが勝者になって貴方にわがままを言えるんじゃないのか?」

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やがて20分もすればほとんど全ての料理は運ばれて来た。
『出来るだけ一緒に持って来て欲しい』とリクエストしたので、テーブルの上は一斉に豪華になった。

オレと奴は互いの顔を見て笑った。
それから『さて、どれからいくか?』と言った具合にそれぞれの料理に視線を向けて、手にしたフォークとナイフで……。

オレはまず、取り皿にサラダを乗せた。しかしフェイントを掛けて、サラダよりも先にオリーブを口に運んだ。
すると奴は「あ!」と言った。
どうやらオレは奴の推理を挫いてしまったようだ(笑)

「ずるい! いつもサラダを最初に食べるくせに!」
「これはゲームだぞ? いつも通りに食べないに決っているじゃないか」
「それじゃあ『どちらが相手を良く見てるか』なんて関係ないじゃない。ずるいよ!」
「ははは、貴方も負けずにオレを裏切ったら良い」

なんてオレが調子に乗っていたら奴は本当に裏切ってくれた。
奴が真っ先に食べたのは、なんとステーキ!
今度はオレは見事に推理を挫かれてしまった(汗)

「ステーキって、おい、最初にステーキに食らいつくか? せめてプロシュットだろ!」
「お前は絶対にこれを選んでいないと思ったからね。そうか、このゲーム、いつものお前とは逆の推理をすれば良いんだ」
「逆になるとは限らんぞ? 貴方だって予想も付かないメチャクチャな順番で食べてやろうとか思ってるだろ?」
「あはは、その通りだ! さあ全問正解してみるんだね!」
「今ので外れたからもう全問正解は無理だ!」

オレ達は相手を負かしてやろうと、ほとんどヤケのようにワインをがぶ飲みした。
そして意外性を狙って料理を選び続けて、その結果は……。

2014_0927_4.jpg

オレの勝利だった!
奴は3番目にポテトを食べる、それから最後にピザ、という推理が見事に正解した。

逆に奴が当てたのは1品だけ。
オレが4番目に食べたピザを当てた。

「やったぜ! どんなわがままを聞いてもらうかな」
「悔しい! ゲームをむちゃくちゃにしたお前のせいで負けた!」
「すまないな」
「今度の週末、二回戦目をするよ!」
「実は貴方ってこういうのが好きだよな……」
「負けて終わりにするのは悔しいからね。良し、じゃあわがままを聞くよ。何が良い?」

奴は唇を尖らせながらオレに拍手を送ってくれた。
オレは腕を組んで奴を見詰めた。口元をニヤけさせながら、どんな注文をしてやろうかと考えて。

「今決まらなかったら後で言っても良いよ?」
「いや、今決めてしまいたい」
「了解。なに?」
「じゃあな」
「うん」
「ここでパンツを脱いで、その脱ぎたてほかほかのパンツをオレの頭にかぶせてくれ」
「そういうのはダメ! もうここに来れなくなっちゃうから!」
「冗談。じゃあアイスをご馳走してくれ。ここのヘーゼルナッツとベルギーチョコのジェラートはお気に入りなんだ」

そんなことで良いの!? と奴は目を丸くした。
だがオレは本当にそれで十分だった。
奴と推理ごっこをしたのが物凄く楽しかったから、それだけでもう。

2014_0927_5.jpg

「美味しい?」
「ああ、最高だ。素敵な貴方にご馳走して貰えて嬉しいぞ」
「お前が幸せだとオレも嬉しいよ。でも、お前の事だからマニアックな注文をするかと思ったよ」
「どんな?」
「この近くの公園でオナニーをするから見ていてくれ、とか。帰り道は四つん這いで犬になって歩くから首輪を引っ張ってくれ、とか」
「それはお仕置きじゃないか?」
「うん。でもお前の場合はお仕置きがご褒美なるから」

オレは敢えて否定しないでおいた。

そして考えた。
次回はそういうハードルを上げたわがままを言っても良いかもな……と。
何やら奴は、そんなものを期待していたようでもあったので(実はオレがそうしたかったからそう見えただけかもしれんが)

次回は奴が勝つ気でいるようだが、奴が勝った場合にはどんなわがままをオレに言うのか、それも非常に楽しみである。

乞うご期待。

==========

という訳で、今夜も長い雑文を読んでくださってありがとうございました。

この勝負の続きは来週を予定しております。
本当は明日したかったが、明日はオレが仕事の為に(泣)
だが明日は奴が手料理を作って待ってくれるので、それはそれでとても嬉しい。

「せっかくの休日なのに良いのか?」
「外食ばかりじゃ身体に悪いから」
「ありがとう」
「お前の事を大切に思ってるからね、明日も頑張って」

なんて睦言を仲良く語らいながら(久しぶりの更新だと惚気けが止まらなくなります)

皆さんは明日も、オレの分まで休日を楽しんで下さい。
そして今夜は週末に相応しい愉快な夢を見られますように。

おやすみ。

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壁の花
Thu.25.09.2014 Posted in 恋愛
ある薄暗い室内。
そこは甘美に息づくキメラたちを閉じ込めた檻のようだった。

耳と尻尾の付いたキャットスーツに身を包んだ女性と、鼻輪と牛の尻尾を付けた男性。彼女は彼を家畜用の縄鞭で打っていた。

蛇体を思わせる刺青を腕に施した女性と、カエルのマスケラを付けた男性。彼女は彼に真っ赤に焼いた針をチラつかせていた。

お揃いの兎の耳を付けた2人の女性と、孔雀のようなドレスに身を包んだ美女にしか見えない男性。彼女たちはずっと顔を寄せあって楽しそうにおしゃべりをしていた。

紫色に照らされながら空を漂う煙。
カウンターにも床にも並べられたアルコールのボトルとグラス。
そんな室内には快楽と苦痛の、歓喜の声が絶えなかった。

普段のオレなら、そんな場所に居れば水を得た魚のように精気に満ちる。
だがその日は逆で、そこの空気がとても重く感じた。
甘い葉巻の匂いによって頭の重さは増し、背徳のなされている暗がりに生理的な苛立ちを感じた。

「息苦しい」

オレはそう呟いて照明の届かない壁際に退散した。
すぐに奴もやって来た。カラーストーンでキラキラと輝く白猫のマスケラを外して。

「やっぱり具合が悪い?」
「大丈夫だと思ったんだが」
「帰ろうか?」
「……。いや、せっかく貴方は楽しんでいるんだから」
「オレは良いよ。もうたくさん飲んだし、酔っ払ってステージで踊ったし!」
「はは、今が最高潮に楽しいくせに。戻って良いぞ。オレは水でも飲んで、息苦しいのが治ったら戻るから」

オレは奴の手からマスケラを取って再び目元を覆ってやった。
しかし奴はオレの前から立ち去ろうとはせずに、隣に並んで壁の花になるのを付き合ってくれた。

「水を持ってくる?」
「いや、良い」
「遠慮しないで」
「してないぞ」

光の届かない壁際で奴と手を繋いだ。
そこは葉巻の煙が届かなくて、ここで唯一空気が澄んでいる場所であるように思えた。

オレはずっとここを出るタイミングを計っていた。
ただ、奴を置いて帰ることに躊躇していた。
しかし奴も一緒に帰ると言ってくれたので、あとは主催者に挨拶をすれば良いだけだった。

マスター(主催者)の姿はすぐに見付かった。ボックス席に座ってゲスト(参加者)と話をしていた。
近代的なボンテージファッションに身を包んだ参加者の中で、彼女だけは懐古的な和装だった為に目立っていた。

結い上げた黒髪には珊瑚のかんざし。
白と黒の格子柄の着物には鮮やかな真紅の帯。
赤い細紐を柄に巻き付けた和風の一本鞭。

オレはマスターの元に行って、先に失礼する挨拶をしようかと思った。
だが留まってその姿を眺めてしまった。ツンとした横顔で、ロバの耳の付いた全頭マスクを被った男を見下ろしている姿がとても素敵だったから。

「ああいう衣装も良いな」
「着物は大好きだ」
「貴方も着るか?」
「オレじゃ似合わないよ」

そんな話をしながらオレ達はすっかり壁の花になっていた。
オレは壁に凭れ掛かって、奴はオレの様子を伺いながらオレの髪を撫でたりキスをしていた。

そんな折、不意に室内の照明が一段ダウンした。
すると周囲の妖し気なざわめきはますます開放的となり、わざわざ各々の行いを目で確認するまでもなく、彼等がどんな行為に耽っているのか安易に想像できるようになった。

しかし、それでもオレは頭のネジが一本抜けような状態のままだった。
ボンヤリしながら奴に話しかけていた。
徐々に行為をエスカレートさせる奴の手と口に感じさせられながら。

「……そうだ。着物を見て懐かしい気分になる理由が判った」
「過去の日本を思い出すから?」
「いや、母親が日常的に着ていたんだ。タンスの中には何着もの着物があって」
「それは初めて聞いた」
「オレも唐突に思い出した。ずっと忘れていた。だが今は一着も持っていない。何枚かは妹に譲ったと思うが、あとはどこに行ったんだ……」
「おかしいね?」
「音楽を流して部屋で日本舞踊を踊っていた。バレエのレッスンに行く時にも着物を着て」

それから? もっと話して。
奴はそう言いながら舌を動かした。
オレの怒張したものを口の奥深くまで咥え込んで、次第に動きを早めながらオレを満足させようとした。

壁際にいれば紫の煙は来ないと思っていた。
しかし、いつの間にかそのチョコレートにも似た独特の匂いはオレの顔にもまとわり付いていた。さっきよりも興奮したゲスト達が葉巻の量を増やしたからだった。

「煙い」
「ん」
「苦しい。出すぞ」
「ん」

オレは奴の髪を掴んだ。
奴はオレ自身を飲み込むかのように喉を鳴らし、そして絞り尽くすように強く吸い上げた。

奴が口を離した途端にオレは床にしゃがみ込んだ。
奴を抱き締めて「口直しに何か持ってくるぞ?」と言えば、奴は「ジンジャーエール」と言ってオレの唇を舐めた。

誰の目にも触れられていない、煙に巻かれての行為だった。
ジンジャーエールのグラスを2つ持って来た後もオレ達は壁際の床に座っていた。互いに過去の他愛もない話を口にしながら。

「なんていう女優に似ていたんだっけ?」
「MOの若い頃にそっくりだった」
「検索して出てくる?」
「出てくる」
「……出てきた。美人だね!」
「そう言われるのが好きだったみたいだ。容姿を褒められるのが何よりも。だが踊りも上手かったし、お茶と歌も上手かったし、編み物も上手かったし、掃除と料理は駄目だったが、それで十分だったのにな。嘘を吐いたり過激な事をしたりして自分をもっと強く見せようとする必要なんてなかったのに」

パーティの最高潮の盛り上がりは過ぎていた。
次第に冷静を取り戻してゆくざわめきの中、オレは奴に訊かれてもいない事を自ら話していた。

その一部は、母にとっては醜聞と言える内容だった。
だがオレの心には微塵もの増悪はなかった。
それどころか、そんな話をしながらもオレは、母を愚かだと思いながらも可愛らしいとも感じていた。少なからず、だが。

奴は白猫のマスケラを付けてオレの膝に凭れ掛かっていたので、オレは猫を撫でながら独り言を言っている気分だったのかもしれない。
奴は時折うなずくばかりで、ほとんど何も言わなかった。ただ最後にこう言った。「Rのお母さんは怖かったんだよ」と。

「そうだな」とオレは答えた。
奴に疑問を投げかけながらも、本当はオレもそれが判っていたから。

しかし、『じゃあ今はどうなんだろうな?』という疑問を投げかける事は出来なかった。

自分を苦しめた父は数年前に亡くなり、今は平穏に暮らしている筈だが、今の母も決して幸せそうには見えない。
かつての美しかった容姿は見る影もなくなり、もう完治は無理だと医師に言われた精神の患いによって、幻聴や幻覚に振り回されては虚言を言い続けている。

一度深く傷付いてしまった心を治すことは無理なのだろうか。
そればかりか、その時の苦しみに心は永久に縛られて、二度と幸せな気持ちで生きる事が出来なくなるのか。

手術しても治らない病気があるように、心もそれと同じなのかもしれない。
どんなに良い医者に診てもらっても、薬を飲んでも、良い環境に移しても、何も変わらないどころか悪化するばかりで(長年の投薬や老化による脳力の衰えも手伝って)

「貴方は、何か怖いことはないか?」

尽きぬ母に対する不安を飲み込んで、オレは奴にそう質問した。
すると奴は口に笑みを浮かべて言った。「このパーティ会場に入る時に怖いと思ったけど、お前と一緒だから大丈夫」

猫天使。

脳天気にもオレの頭にはそんな言葉が浮かんだ。

それで問題が解決した訳でもないのに、急に救われた気分になるのはどうしてだろう?
奴は漫画に登場するような全ての問題を都合良く解決してくれる天使ではないのに、それでも心の中が明るくなるのはどうしてなのか。

「そうか、良かった」

オレはそう答えて奴の背中を撫でた。
母も父のことなど忘れて、まだ美貌が残っている内に良い男とくっついちまえば良かったのに……と思いながら。

壁の花となって饐えた(腐敗した)匂いを放つ過去に縛られたりせずに、このパーティに集う女達のように、男達は幸せを運んでくる蜜蜂であるかのように振る舞えたなら良かったのに。

もっとも人の目を気にしてばかりで気の弱かった母には、それは無理なことであったのかもしれない。
ドメスティック・バイオレンスなどで離婚しても十分に子供たちを育てて行ける環境を国が整えてくれたら良いのにな。

==========

という訳で、
10日以上も更新をお休みして申し訳ありませんでした。
それでも待っていて下さった皆様に感謝を申し上げます。

今後も不定期ではありますが、よろしくお付き合い下さい。

皆さんが毎日、良い夢を見られますように。
おやすみ。

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猫を愛でて小判を捕まえて
Sun.14.09.2014 Posted in 恋愛
実家の書斎にて、ごきげんよう。

昨日の午前中は、招き猫の発祥の神社(★)とされる『今戸神社』に行ってきた。

(★)江戸時代末期に猫が夢枕に現れた事に由来して、近年になって招き猫の発祥の地であると名乗りを上げた。しかし他にも、豪徳寺、自性院、伏見稲荷が発祥であるという説もある。どれが本当なのかは不明。

2014_0913_1.jpg
■浅草駅より徒歩15分。浅草七福神社の一つ。

奴に教えられるまでこんな神社があるのを知らなかった。

招き猫の発祥地に相応しく入り口にも境内にも拝殿にも社務所にもたくさんの猫が飾られていて、しかも絵結びの効果が大きいと評判で人気だそうだ。

「猫の可愛いお守りがたくさんあるね」
「買っていくか?」
「うん、猫好きな友達の分も買っていく。恋人を欲しがっている友達にも」
「相変わらず貴方は親切だな。効果があるようにご祈願するか」

社務所にはたくさんのお守りやストラップなどが売られていた。
どれにも可愛い猫が描かれている為、まるでファンシーショップで買い物をしているようだった。おみくじにも可愛い猫のマスコット(お守り)がオマケに付いていて。

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■この猫を愛情を込めて撫でてから携帯やスマホの待ち受けにすると恋愛が成就するそうだ。猫の名前はナギちゃんとナミちゃん。主祭神であるイザナギ尊とイザナミ尊から由来している。

「参拝するだろ? 縁結びって恋愛だけじゃないからな」
「良い縁がないと仕事は発展しないね」

そんな会話の後、オレ達は2人並んで拝殿の階段を上がった。
そして胸ポケットに用意していたお賽銭を出して、それを賽銭箱に入れる前にオレは奴にこう言った。

「恋愛のお願いもしておくけどな」

すると奴はニッと笑った。
奴にはオレの気持ちが伝わったようだ。
『仕事が発展する人脈をお招き下さい。そして、奴といつまでも仲睦まじく過ごせますように。いつか、社会的に認められた形で一生のパートナーとなれますように』と祈るつもりだという事が。

皆さんの良縁も祈ってきました。
ステキな人物、頼れる人物、あるいは欲しい物など、そんな良いご縁としっかりと結ばれますように!

参拝の後は、東京で一番美味しいとの評判を聞く釜飯を食べた。

2014_0913_3.jpg
■今戸神社から徒歩5分ぐらいの釜飯屋『むつみ』。オレと奴が食べたのは海鮮釜飯(2100円) 味もさるものながら客に対する心配りが行き届いていて心地の良い一時を過ごせた。

注文をして出来る上がるまで、待つこと30分程。
やがて運ばれて来たのは、アサリと椎茸の出汁の効いた上品な味わいの逸品だった。
おまけに釜には程よい『おこげ』が付いていて、それを食べればまた至福の境地を味わえた。

「なんて美味しいんだ」
「評判通りだな」
「そういや『おこげ』と呼ばれる女性が居てな」
「おこげ?」
「ゲイが好きな女性の事だ。ゲイとオカマは別物だが一緒たくにしてオカマと呼んで、このお釜(釜飯)にも付いているが、お釜には『おこげ』がくっついているということから来ている呼び方だ」
「ああ、その『おこげ』さんはどの国にもいるね。オレのゲイの友人の事が大好きな女性が何人かいるよ。オレも好かれちゃってるみたいだけど」
「そうなのか!」←初耳
「彼とオレはカップルだと思ていたんだって」
「何だと!」←嫉妬

オレ達は箸を動かしながら(釜飯に舌鼓を打ちながら)休日ならではの話をした。他愛もない事から、友人の事、それから釜飯屋を出たら次はどうする? という事を。

ちょうど前日の夜、オレはかつて浅草で仕事をしてた人と電話で話をした。
彼は「美味しい店を教えるよ」と言っていたので、唐突だったがメールで訊くことにした。『今、浅草だが美味しいデザートの店はないか?』と。

返信はすぐに来た。
オレ達は食後のお茶を飲んだ後に、さっそく彼がオススメしてくれた店に行くことにした。そこは幸運にも、今いる釜飯屋から歩いて5分程のところにあったので。

2014_0913_4.jpg
■大学芋(400g入りで700円)が人気の『千葉屋』。知る人ぞ知る名店のようだ。一眼レフで撮り忘れたのでこの店のみiPhone撮影。

「美味しい!」
「和風の芋ケーキみたいだ。普通の大学芋と違うぜ」
「たくさん入っているから夜のデザートにもなるね」

大学芋は出来たてで熱かった。
オレの前には地元に住んでいるらしい子供さん、ご夫婦、お婆様などが並んでいて、その人気を伺えた。

店内でイートインは出来ないので車に戻って食べた。
基本的に奴はジャガイモやサツマイモやカボチャといった穀類が大好きなので、甘い味付けだったにも関わらずかなり気に入ったようだった。

夜にも食べたが、冷めてしまっても美味しかった。
普通のケーキや和菓子とは違ったデザートを求めている方に超オススメしておきたい。

「今日の浅草巡りはいままでと違っていて面白いね」
「ああ、裏通りにも良い店がたくさんあるって知ったな」
「最後に浅草寺に寄っている時間はある? 今サイトをチェックしたら燈籠会というのをやっているみたいなんだ」
「約束の時間までまだまだ余裕があるから大丈夫だぞ」

残念ながらオレ達が浅草寺に行ったのは真っ昼間で、当然だが燈籠にはまだ火が灯されてはいなかった。

それでも奴は楽しそうに、境内に並ぶ様々な絵が描かれた燈籠を眺めたり写真に撮ったりした。熱心に日本の文化を語るカナダ人3人組の会話に聞き耳を立てたりしながら(笑)

「彼らは何か面白い事を言っていたか?」
「私も燈籠に絵を描きたいって言ってた。何かのアニメを描きたいんだって」
「はは、日本に来たらアニメか」
「オレなら猫を描くよ」
「じゃあオレは……おちんちんを」
「こら! 罰当たり!」
「男根信仰っていうのもあるんだぞ」

浅草寺でご挨拶の参拝をして、かき氷を食べながら少し戯れて、それで昼間だけの浅草巡りは終わった。

ほんの4時間ばかりだったが楽しかった。
そしてその後は気分をガラリと変えて……妖しく淫らなフェティッシュパーティへ、壁の花になりに行った。

その様子は、またいつか(笑)

==========

さて、
連休2日目だが、皆さんも楽しくお過ごしだろうか?
オレは何の呪いなのか、明日は夕方まで仕事になってしまいました(汗)

どうぞ明日はオレの分まで楽しんで下さい。
部屋に一人残される奴に、「楽しい事があったら良いね!」と1秒間だけでも祈って頂けたら嬉しいです。

明日も皆さんにたくさんの幸運があらんことを!
会社のデスクより応援しています。

では、今夜も心安からに楽しい夢を。
おやすみ。

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デジャヴではなく
Sat.13.09.2014 Posted in 恋愛
『今夜は○○○で仕事が終わるんだったな?』
『そうだよ』
『○○○ホテルのレストランで夕食をどうだ?』
『久し振りだね。そうしたい』

今日の夕方、オレ達はそんなメッセージのやり取りをして、過去に2人で何度か利用した鉄板焼きの店に行く約束を交わした。

金曜日の夜には良くデートをしているオレ達だが、その店で食事をするのはかなり久しぶりだった。
とても楽しみだった。そこはたくさんの思い出のあるホテルだから、今夜は話が弾む予感がして。

付き合う前にはトキメキが止まらない初なデートをしたし、付き合いはじめの頃には食事の後には必ず部屋を取ってセックスをしたし、仲違いして奴が話してくれなくなった事もあったし、バレンタイン(当日ではない日)のチョコレートを買ってその場で交換した事もあったし、まったく色々とあったもんだ。

奴も、そんな思い出のホテルで食事をすることを喜んでくれた。

人気(ひとけ)の少ないフロアで待ち合わせをしたのだが、奴はそっとオレの背後に近付いて、「おまたせ」と言ってオレの背中にピッタリと張り付いた。
いきなりそんな事をされたオレはちょっと驚いたが、嬉しそうな顔をしている奴が余りにも可愛くて、すぐにキスをしたいのを我慢しながら笑うしかなかった。

その時にオレは不意に思った。
オレは今もまた、数年前と同じように奴の事が大好きなんだな、と。

==========

「ここのステーキを初めて食べた時、とても美味しくて驚いたよ」
「今夜もたくさん食べてくれ。握りも注文するか?」
「あは、そんな食べられるかな? でも、握りも美味しいんだよね。うーん、じゃあお願い」

ホテルの上階にあるその店には恐らく1年は来ていなかった。
しかし味や雰囲気はまったく変わっていなかった。
お陰で、案の定、昔の思い出話に花が咲いた。
奴はオレ以上に細かな事を覚えていて、時折オレは恥ずかしい気持ちにさせられた。

「……あの翌日の朝、お前はオレを離してくれなくて、本当にお前に会社をサボらされるのかと思って焦ったよ」
「ああ……そういう事もあったな」
「あと、オレが早く眠ったら不機嫌になったよね。セックスを一回しかしなかったって」
「いや、怒った訳じゃないぞ」
「ふふふ、今なら判るよ。寂しかったんだよね」
「まあ……。良いから、もう昔の話は」
「ふふふ。真夜中に公園に出ようってオレを誘って……」
「それ以上言うと今からまたそれをやるぞ」

奴はニッと微笑んでオレに口止め料(ワインのお代わり)を要求した。
オレは従順に奴のグラスにワインを注いだ。きっと今後も、このホテルに来る度に恥ずかしい事を言われるのだろうな……と予感しながら。

==========

食事を終えて外に出れば涼しい風がそよいでいた。

すぐ近くには、さっき話題になった公園があった。
オレは少し意識しながらそちらに目をやった。すると困ったことに、公園に茂る黒々とした木々がとても誘惑的なものに見えた。

「散歩したいが、デング熱がな……」

オレがそう呟くと奴がオレの顔を覗き込んだ。「やっぱりしたかったんだね?」と言って。

あっさりと図星を当てたれたのでオレは素直になる事にした。
「まあな。でも今は貴方の尻が蚊に刺されるから我慢だ」と答えて、奴の肩を抱いて。

「お前の○○○も刺されるかもしれない。冬になるまでの辛抱だよ」
「冬にやるつもりか? 木に押さえ付けられて唇をい噛まれたりビンタされるオレはともかく、貴方は尻が冷えて風邪をひくぞ」
「お尻にカイロを貼れば大丈夫だよ」
「尻にカイロって、その格好は笑えてプレイにならない」

しかし、待て。
奴の左右の尻にカイロをペタリと貼るか。
それはそれで可愛いような気がする。
むしろオレみたいな変態はますます興奮するんじゃないか?

もしも実行したらこのブログにてその様子を……書いても良いだろうか?(笑)

オレ達はそんな話にクスクスと笑いながらタクシーに乗った。
そして明日から始まる連休の話をした。
日曜日は友人達と遊ぶ予定が入っているが、明日の土曜日はどうする? と。

「あのね、行ってみたいところがあるんだ」

奴がそう言った。
それはどこなのかと訊いたらオレ達にはぴったりな場所だったので、明日はそこに行く事に決めた。

なかなか人気スポットのようなので早起きをして、早く到着して。
奴は連休だからこそ早起きをするのが大好きだ。楽しい時間を少しでも長く過ごす為に。

連休前の夜は浮かれて夜更かしをするのがオレの常だが、そういう訳で今夜は早く寝る事にする。

皆さんも楽しい連休をお過ごし下さい。
遠出される方は移動中にお怪我などされませんように。
天気にも幸運にも見守れる3日間となるように祈っています。

では、今夜も心安からかに幸せな夢を。
おやすみ。

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背徳の花泥棒
Fri.12.09.2014 Posted in 恋愛
木曜の深夜に『水曜日の猫』を飲みながら、ごきげんよう。

秋になって奴の仕事は一段落した。
それで時間に余裕が出来た為に、近頃は友人と一緒にスポーツクラブに行ったりゲームで遊んだりしている。飲んだりクラブに行くのはオレが嫉妬するので行かないでくれているが(笑)

昨夜の事、奴はいきなりオレの頭を揉みはじめた。
オレがソファに座っていたら両手で頭を覆って来て、そのままモミモミと。

「サロンで髪をいじってもらっているみたいだ」
「気持ち良い?」
「良いぞ。ヘッドスパにはまっているのか?」
「スポーツクラブに年齢の割にとても若い顔をしたトレーナーがいてね、その秘訣を訊いたらこうやって頭の皮膚を揉んで柔らかくしているからだって教えてくれたんだ」

そんな簡単な事に効果があるのか?

と、オレは疑問に感じたが「へえ」と感心して見せた。
何故ならもっとやって欲しかったからだ。
奴の指は長くて骨がしっかりとしているので、程よく力が入って本当に気持ちが良かったから。サロンの人にマッサージしてもらうよりも、ずっと。

「上手いな……。そのトレーナーさんにコツを教えてもらったのか?」
「うん、髪の生え際から頭の頂上に向かって、こうして指を……」
「なるほど、本当に顔が若返るかも。顔面もほぐれる」

オレがそう褒めちぎると、奴は聞きかじったヘッドスパのウンチクを語り始めた。
気持ちが良くなってくると頭を休めたくなるオレはその話のほとんどを聞いていなかったが(すまない笑)、こんなに気持ち良くしてくれる奴にお礼をしたくなった。

「これからもたまに頼んで良いか? 頭の中まで休まる」
「良いよ。簡単なマッサージだしね」
「お駄賃をあげるぞ」
「美味しいお酒とか?」
「お酒が良いか?」
「うん。あ、でも、毎回違うのが良いな。その方が楽しみ。猫のおやつでも良いよ」
「貴方が食べる猫のおやつか」
「違うよ、猫のは猫の」

良し、ならば明日は……と、オレは気持ち良さに自然と目を閉じながら考えた。
明日はリキュール入りのビターなチョコレートを買って帰ろう、と。

そして今日、
予定したチョコレートではなく、ハロウィンの黒猫のチョコレートを買った。

それから仕事先に見つけた、今秋はじめてその香りを嗅いだ金木犀を少しだけ失敬して、黒猫チョコに添えて奴に渡した。

「本当に良いの? お駄賃は冗談で言ったのに」
「ああ、良い香りだろう」
「……(金木犀が乗ったチョコの箱を顔に当てて)チョコレートの香りが混じった金木犀ってはじめてだ。すごく甘い香りだよ」
「ははは。開けて食べて良いぞ。オレはシャワー行ってくる」
「ありがとう。一緒に食べよう。金木犀は飾っておくね」

奴のキスに見送られてオレはシャワーに行った。
今回のお駄賃は成功だったと、心の中でニヤニヤしながら。

それにしても、もう金木犀の季節なんだな。
今年は残暑が長引くかと思ったが意外と早く秋が来た。

それは奴も驚いていた。
夜はとても涼しくなったと、早い秋の到来を喜びながらも少し不安に感じていた(異常気象に対する不安な)

「どこで咲いていたの?」
「○○○の近くの○○で」
「ああ、あそこね! 毎年良い香りだよね。そこからこっそりともらってきたの?」
「貴方に捧げる為に罪を犯してきたぜ」
「あはは! 大丈夫、罰せられるときはオレも一緒だ」

嬉しい事に奴はオレと同じ罪を犯して罪人になると誓ってくれた。
つまり一緒に金木犀の咲く庭に行って、今度は奴からオレにその金色の花をプレゼントしてくれると。

本当はやっちゃいけない事なんだがな。
そしてオレは喜んではいけないのだがな(笑)

しかしそこでこっそりと花を摘む人間が多いことをオレは知っている。
夜にはカップルがやって来て、恋人との楽しい語らいの為に花を摘んでいる事も知っている。

花泥棒は本当には罪になる。
しかし長く平和と秩序に守られたこの時代、花を盗むスリルを感じながら恋人に愛を囁く事を禁断の楽しみとしている人間が実は少なくないのかもしれない。平和ならではの可愛らしい背徳だ。

だからオレ達の事も大目にしてくれ……なんて事も言ってはいけないのだろうが、その金木犀のお世話をしている方に感謝しよう。貴方がいてくれるからこそ、オレも奴もたくさんの人達も、この季節になると幸せな一時を過ごせるのだから。

いや、感謝を免罪符にしようとは思っていない。本当はちょっとは思っているが(笑)

とにかく、奴と金木犀を見に行く夜が楽しみだ。
金木犀に顔を寄せて笑う奴を、オレ達の思い出の為と、奴の祖母さんに送る為に、パシャパシャと写真を撮ろう。

皆さんも心豊かな楽しい秋をお過ごし下さい。
眠られている時もたくさんの幸せに包まれていますように。

おやすみ。

<前回のエントリーの余談>
あの翌日、奴と鉄板焼きに行く予定だったが、大雨の影響で急な仕事が舞い込んで中止になりました(泣)
だが連休は楽しむぞ! 皆さんもな!

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数年前の秋に戻るタイムマシーン
Wed.10.09.2014 Posted in 恋愛
スーパームーンの夜に、ごきげんよう。

昨日の関東は生憎の曇空で月を拝むことが出来なかったが、今夜はスーパームーンの美しい姿を仰げたぜ。

今夜も昨夜の残りの月見団子を窓辺に置いた。
しかしススキは……猫様の玩具となったので今夜はナシだった。

猫様は昨夜からススキを狙っていた。
オレ達が目を離した隙に葉っぱにカミカミと噛み付いて。

「駄目だよ。スーパームーンが終わったらお前にあげるから」

と奴は言って猫様をススキから離そうとした。
しかしタイミングが悪く、猫様が葉に噛み付いた瞬間に抱き上げたものだから、花瓶(グラスだが)を倒して水をダーっと股間と床に零してしまった。

「ああ! びちょびちょ!」
「Y君、お漏らししたな!」
「冗談言ってないでタオル!」
「おう!」

猫様はビックリして逃げていってしまった。
オレは奴にムーミンのタオルを放ってやった。しかしそれでは拭い切れず、結局奴はズボンを取り替える事になった。

「ものが乾かない季節になったね。洗濯物もすぐに乾かなくなった」
「ああ、そういうところで夏が終わって秋になったのを実感するよな」
「秋だね」
「秋だな」

そして今日は、静かにスーパームーンの夜を過ごした。
ススキをもらった猫様はそれでジャレて、オレと奴はウイスキーで乾杯して団子を食べて。

ウイスキーと団子は合わなかったが(笑)
しかし奴は月に見立てた黄色い団子を嬉しそうに月にかざしていたし、ウイスキーで乾杯する時には互いの幸運を祈ったし、どちらも欠かせないものだった。

「秋には楽しい事があると良いな」
「忙しくても楽しい日を作ろう」
「そうだな。どこかに行こうな」
「今年も紅葉を見に行きたい。秋になって涼しくなった海も見したいし、TDRのハロウィンも行きたい」
「ああ、行こうな」

オレは約束の意味でウイスキーのグラスを奴のグラスに当てた。
奴は顔に笑みを浮かばせて、残っていたウイスキーを飲み干した。

秋は穏やかな日々を過ごしたくなる。
今年は夏が慌ただしかったせいもあって、なおさらゆっくりと奴と過ごしたいと思う気持ちが強い。

紅葉が色付くのはまだまだ先だが、その頃には景色のキレイなところに奴を連れて行こう。
夜の景色も美しいところが良い。そこで時間を忘れて様々なことを語らいたい。普段は口にしない事までも。

そういえば数年前、奴はデートの時に拾った落ち葉を本の栞にしていた。
オレが昔、そんな事をしていたと話したら真似をして。

「この本を見るとあの日のデートを思い出すようになるよ」

奴はそんなことを言っていた。
しかし、何の本だったか? 英文のものでシンプルな表紙の本だったので忘れてしまった。

奴に訊いたら思い出すだろうか?
数年経った今、その本を開いて落ち葉の栞があったら、まるでタイムマシーンを開いたような心地になるだろう。

今夜は奴と鉄板焼きの店に行く約束をしている。
その時に訊いてみよう。

奴が覚えているかどうか、それは明日の更新でご報告したい(笑)

秋の夜長は酒が美味くて、一人静かに飲んでいる内に過去を思い出す。
オレが落ち葉を栞にしたのは、先生と呼んでいた立場の人がそうしていたからだった。

その人はオレの母のせいで苦い思いをしたのだが、今はもうそんな事は忘れてしまっていたら良いな。
それは嫌な出来事だったが、それでもオレには最後まで親切にしてくれた。
もう年齢は60才を超えている。
連絡を取ろうと思えば取れる人なのだが、それをしてはいけないような気がして出来ない。

秋に夜更かしをして、もう忘れてしまった方が良いことを思い出す。そんなことをしているのは皆さんの中にもいるかもしれないな。

これも季節柄の流行病のようなものなのだろう。
一年に一度ぐらいそんな気持ちに掻き立てられて、だが行動できなくて、やがて忘れてしまう。来年の秋が来るまでは。

いつか朝まで起きていられるような日があったら、奴にこの話をしてみようか。
久々に飲み比べをして、その肴の代りに。

さて、明日は数日ぶりに忙しくなるのでいい加減に寝よう。

皆さんは夢の中か?
夢の中でも楽しく過ごしているか?

明日も幸運であるように祈っています。
良い目覚めと共に楽しい1日を迎えられますように。

おやすみ。

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欲情した月に見下されながら
Mon.08.09.2014 Posted in SM・フェチ
月曜日の夜に、ごきげんよう。

先日、奴は筋肉痛で苦しんでいた。

奴は数日前に友人達とスポーツクラブに入会したのだが、数日間思い切り無理をして重度の筋肉痛になってしまった。トレーニング慣れしているマッチョな友人に負けまいとして、同じペースでトレーニングをしてしまって(汗)

「いたた、痛い。昨日より痛くなってる」
「最近忙しくて運動不足だったからな。血行が悪くなる格好はするなよ」
「判った。階段を降りるのが辛い。足がカクンカクンする」
「マッサージするか?」
「痛くしない?」
「揉まないマッサージだ。優しくリンパを流すだけ」

まずは奴に風呂に入ってもらった。
そして身体が温まったところで、手で人肌の温度にしたアロマオイルを塗り付けて優しくマッサージをした。

「痛むか?」
「うん、軽くなら大丈夫」
「明日にはちょっとは良くなっている筈だ。後でクエン酸入りのドリンクも作ってやる」
「クエン酸ってレモン? 筋肉痛に効くの?」
「ああ、効くぞ。レモンと酢と蜂蜜で作る」
「美味しそう。早く飲みたい」

うつ伏せになった奴の足をオレは撫でた。
温めるのも良くないので本当に軽く、皮膚の表面をスッと撫でる程度に。

しかしそれはまるで性感マッサージだった。
『スケベオヤジなRのことだから最初からそのつもりでやったんだろう』と思われるかもしれないが、奴の足は思った以上にパンと張っていて、フェザータッチでやるしかなくてそんなマッサージになってしまった(本当だぞ!)

「あっ」

指の腹で奴の太腿を撫でた時、奴はそんな声を漏らして足を強張らせた。

奴もいやらしい身体になったものだ……とオレは感慨深く思いながらもちょっと悪乗りしたくなった。
同じ箇所を幾度も撫で上げたり、他にも奴の喜ぶ(感じる)箇所はないものかと、臀部を覆っているタオルの中に指を忍び込ませたりした。

奴はピクピクと腰から下の半身を震わせた。
「は」と息を吐いたり、「ん」と可愛らしい声を漏らしたりして。

オレはタオルの中に入れた手の指先で、尻の膨らみの上に円を描き、尻の割れ目にそって指を行き来させた。
すると奴は十分に喜んでいるようで、オレに『そこ』を差し出すように自ら少し足を開いた。

と思ったが、そうではなかった。
奴は急にムクリと身体を起こしてオレの腕を掴んだ。

「駄目。そういうマッサージは今日じゃない日にして」
「駄目なのか」
「駄目だよ。今日、お前に揺さぶられたり足を掴まれたら悲鳴を上げる」
「そんなに痛いのか……」
「痛い。今も足に力が入ったり震えたりするとズキンズキンした」
「すまない、貴方も喜んでいるのかと調子に乗った」
「……喜んでいないことはなかったけどね」
「これで終わるか?」
「……終わっちゃうの?」

性感マッサージから始まるセックスはエロ動画で良く見るが、オーラルセックスもアリなのかもしれない。

オレは責任を取る為に奴を口で愛撫した。
身体に負担を掛けないようにリラックスできる格好になってもらって、余計な事は一切せずに黙々と舌と頭を動かした。

奴は感じてくるとタオルケットでオレの頭を覆った。
オレに拘束感を与える為のサービスだったようだ。お陰でオレはすっかり興奮して、一方的に奴に口奉仕するだけでは物足りなくなってしまった。

「筋肉痛が治ったら続きをして良いか?」
「マッサージの続き? それとも拘束しての奉仕の続き?」
「両方。オレはマゾの出張マッサージ師で、貴方に呼ばれてやって来たって設定で」
「あはは。じゃあオレは我儘なサディストで、お前のマッサージが下手で怒って調教を始める設定だ」
「調教する時は首輪を付けてくれ」
「判った」

そんな変態話で盛り上がれば、変態マゾヒストのオレはますます興奮した。身体を寄せて変態で卑猥な話をするのは『言葉責め』と同等の興奮効果があるものだから。

オレは「やはりここで終わらせるのは無理だ」と言って、奴に少し協力してもらった。
「片足をくれ」と。「貴方がオレの頬を足で踏み付けて、オレがそれを舐めて、勝手に一人で扱いてイくから」と。

奴はそのリクエストに応じてくれた。。
またサービスたっぷりに、言葉による辱めも加えて。

「お前って会社では格好を付けているくせに。こんな姿をみんなが見たら……。でもこれがお前の本当の姿だ」

奴は白い足をオレに与えながらそんなセリフを言った。
それはとても有り勝ちなセリフだったがオレは興奮した。再び奴が艶かしい声を漏らすまで、指の指に吸い付きながら自慰をする痴態を晒した。

「オレに見られながら飛ばして」
「ああ、見ていてくれ」
「ふふ、良いよ。あと一つだけ、何かして欲しい事はない? 特別にしてあげる」
「舐めたい」
「どこを?」
「貴方の×××」

奴はオレの顔の上に獣の格好となってブロンドの髪を掻きあげた。
そして青い目でオレを見下ろし、「思い切り感じながらイって」と命令して、オレはそれに従うのを代償に奴のそこを舌で舐め始めた。

奴の匂いと味に刺激されてオレはいとも容易く昂った。
そんなオレの興奮は奴にも感染したのか、奴は急にiPhoneを手に取って、カメラを起動させてオレに舐められているそこを写真に撮った。

「夢中だね。見てよ」
「いやらしいな……」
「動画でも撮ってあげようか?」
「貴方のオナニーのネタになるなら」
「あはは」

オレは奴に写真と動画を撮られながら、再び奴を感じさせようと奉仕を続けた。
その行為は奴の興奮のツボにハマったようだった。オレの手の中でみるみる内に硬くさせて、自らも淫らに腰を揺さぶった。

「お前の口の中に……しようかな。それとも顔?」
「両方」
「さっき出したからそんなにたっぷりは出ないよ」
「顔にくれ」

奴はオレの手から自分のものを取り返して手淫を始めた。
オレは眼前でそれを見ていた。
奴が手の動きを早めてますます硬くさせ、射精のタイミングはもうすぐだとハッキリと判るぐらい間近で眺めた。

「出すよ」
「出してくれ」
「お前の顔に……」

射精寸前のグンと大きくなったそれと、射精中の快楽を爆発させているそれ。
オレはその双方の眺めにたまらなく興奮しながら自分のものを激しく扱いた。
そして奴に顔に引っ掛けられながら自分も出した。快楽と興奮にもみくちゃにされながら、たっぷりと自分の腹の上に勢い良く飛ばした。

「……合格か?」
「うん、いやらしい姿だった」
「はは、そりゃ良かった」
「iPhoneの画像と動画は消しておくね」
「え。せっかく撮ったのに?」
「こういうのはセックス中に見るから良いんだ。その他の時は恥ずかしいだけ」

勿体無い! 物凄く生々しくエロく撮れているのに!
オレはそう抗議したが、奴はあっさりとポチリと消してしまった。「また今度ね」なんて言って。ああ……。

また今度とは、マッサージ調教師ごっこの時だろうか?
いやそれよりも、奴は、筋肉痛は大丈夫だったのだろう……?

オレは唐突に思い出して奴の足を擦った。「そういえば痛みは? 大丈夫だったか?」と訊きながら。

「お前の顔の上に跨った時はズキンと痛かったけど、あとは不思議と平気だった。気持ちの良い事に夢中で、痛みを忘れていたのかな?」
「今は?」
「えーっと……うん、動かすとやっぱり痛い」

人間の進化にエロスは付き物というが、これもまたエロスを求めるが故の奇跡だったのだろうか?
奴は再び「いたた」と言いながらベッドに転がった。さっきまでの、淫らで甘い表情をすっかりと失くして。

「おねだりを2つも聞いてくれたお礼に、明日は良く効く湿布を買ってくるぜ」
「ありがとう。スースーして気持ちが良いのをお願いね」
「ああ、月見団子と酒と一緒に貴方にプレゼントだ」
「うふふ、楽しみ」

という訳で、今夜は中秋の名月だった。
残念ながら東京は曇り空で月を仰ぐことは出来なかったが、可愛い月見団子とススキを奴に喜んで貰えた。

2014_0908_1.jpg

名月は情緒があって良いな。
これでますます秋が深まるだろうか?
枯れ葉を踏みしめる感触や、それが天土に落ちた甘い香りが懐かしいぜ。

今夜は名月に関するちょっとした出来事があったので、それは明日のエントリーにしたいと思う。

皆さんも今夜は名月を楽しまれたか?
今夜は名月は明日はスーパームーンだ。
月(ツキ)の幸運が皆さんに注がれるように祈っています。

では、今夜も心安からに楽しい夢を。
おやすみ。

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お腹を壊すから食べてはいけません
Sat.06.09.2014 Posted in 恋愛
休日前の深夜に、ごきげんよう。

今日は奴と待ち合わせてミッドタウンの近くにある串揚げ屋に行った。
恒例の金曜日の会社外帰りデートだ。
今日発表された奴の成績が良かったので、そのお祝いも兼ねて。

2014_0905_1.jpg
■車海老と蓮根の串揚げ。車海老はレモンと塩で味付けされている。蓮根は自家製ソースに付けて。蓮根はオレの好物野菜の一つ。根の野菜の揚げ物大好き

「美味しいのを何でも食べてくれ」
「ありがとう! どれが美味しい?」
「全部」
「そんなにお腹に入らない!」

ビールで乾杯した後、オレ達は(カウンターの中の人達に怪しまれない程度に)仲睦まじく食事をした。
奥にあるテーブル席に着けば多少は人目を気にせずにデートらしい振る舞いが出来るのだが、オレも奴もカウンター席で食べるのが大好きなので、たまに意味深な視線や囁きを送る程度に留めている。だが、そんなやり取りも色気があって気に入っている(笑)

「そうか。じゃあ、貴方には……ヒレ肉とうずら卵と車海老」
「ゴージャスだね」
「まだまだ。今夜は動けなくなるまで食べてくれよ。そうしないとここに置いて帰るからな」
「あはは、判った。美味しそうだと思うのを全部オーダーするね」

金曜日の夜に飲む酒とは何故にああも美味いのか。
オレ達は久しぶりにテンションを上げて飲んだ。楽しい語らいは尽きず、この金曜の夜が何時間でも続けば良いと思った。

「お腹いっぱい。でも楽しい食事って、もう入らないと思ってもまだ食べたくなるから不思議だね」

奴のその言葉にオレは同意した。
まったくその通りだった。オレも既に満腹だったが、奴と「美味しい」と「楽しい」をもっと共感したくて、今度はついついヤングコーンの串揚げをオーダーしてしまう始末だった。

その店にはいつも外国人客が来ているが、金曜日ある今夜は何時もにも増して多くの外国人客が来ていた。

聞き耳を立てていた訳ではないが、後ろのお座敷の日本人と外国人の混合グループの会話が聞こえてきた。
「ジャパニーズ スタイル」というフレーズが繰り返されていたので、恐らくお座敷スタイルで飲食するのが始めての外国人の接待だったのだろう。

それを聞いてオレ達は過去を思い出して懐かしい話をした。

「初めて貴方を紹介された時、オレもあんな風に英語で会社や会社の近辺の案内をしないといけないのかと思った」
「お前ってオレは日本語を話せないと思ったんだよね」
「誰だってそう思うだろう。貴方には日本人の要素がないし」
「ふふ、皆に驚かれるよ。でも、お前には日本語を話せないフリをすれば良かった」
「なんで?」
「お前はきっとオレを口説くために必死で英語の勉強をしたから。それに不慣れな英語でオレを案内する姿はきっと可愛かったから」

端正な顔でニコニコと笑いながらそんな事を語る奴は最高だった。鼻先に噛み付きたいぐらいだった。

ああ、きっと必死に英語の勉強をしただろう。
どうやったら自分の気持ちを上手く(格好良く)伝えられるだろうかと、食べるのも寝るのも惜しんで、切ない心情を語る為のハイスキルな英会話を何が何でもマスターしただろう。

「質問だ」
「なに?」
「もしも必死で勉強したり可愛かったりしたら、もっと惚れてくれたか?」
「え! うーん、同じかもしれない。英会話の壁がなくてもお前は必死だったし可愛かったから。考えている事がバレバレで」

自ら過去の恥ずかしい事を掘り起こしてしまって、オレは「しまった!」と思った。
物凄く照れ臭くなってそれ以上は追求しなかった。「へえ、そんなもんか」とか言って、最後のデザートにジェラートを注文して。

しかし……。
今の『英語必須』の状況を思えば、奴は日本語を話せなかった方が良かったのかもしれない。オレは語学が苦手だが、それでも絶対に奴を諦めたりはしなかった筈だから。

諦めずに必ずやハイスキルな英語をマスターして奴を……と思ったが、そんなに上手くはいかなかったようにも思う。
オレが英会話をマスターする前に奴が日本語をマスターしたりしてな。あるいは、超ド下手な英語でグタグタな告白をして奴に笑われたりしてな。

ああ、きっとそんな風になっていたに違いない。
やはり奴が日本語を話せて良かったぜ(汗)

2014_0905_2.jpg
■トロとサゴシ(サワラの子供)のお造り。サゴシは淡白で柔らかくて食べやすい味

【以下、G注意】

やがて店内が混み合ってきたのでオレ達は切り上げる事にした。
もう少し飲んでいたかったが、少し物足りないところで切り上げるのが楽しく夜を過ごすコツだ。

帰宅して、シャワーを浴びたら2人一緒に寝室に行くことにした。
無論、休日前のセックスを楽しむ為だ。
今夜は英語で淫らな言葉を囁きながら楽しもう……などと約束して。

オレは先にシャワーを浴びた。
そして濡れた身体を拭うために準備していたバスタオルを手に取り……。取った途端に、何やら茶色いものがサーッと横切るのを目にした。

「出た!!」

オレは条件反射的に声を上げた。
奴は驚いて、「どうしたの?」と浴室のドアをノックした。

しかしオレはドアを開かずにGを始末しなければならなかった。ドアを開いてキッチンの方に逃げて行ったら最悪だから。

そのGは、よりによってオレの大嫌いなタイプだった。
Gが苦手な方が多いのであまり詳細は書きたくないが(それでもしっかりと書くが)、身体はまだ小さくて、足が薄い茶色で、身体が焦げ茶色という、最もオレが不気味だと思うカラーリングのヤツだった。Gとカマドウマの中間みたいで不気味度が2倍だ。

今までこのマンションにGが出た事は一度もなかったのに、一体どういうことなのだろう?
今年は異常気象のせいでGが多いという話は何度も耳にしたが、今まで出現しなかった場所にすら現れるほど本当に多く繁殖しているという事なのか。絶望的だ。

「すまない、新聞紙をくれ! ドアの隙間から入れて!」
「どうしたの? 何があったの?!」
「Gが出たんだ! オレの足元にいる! オレのパンツの入った籠のすぐ横!」
「ええーー! 判った、待ってて!」
「早くな! オレのパンツがGに汚される!」

結局、オレは丸めた新聞紙で一撃で仕留めた。
しかし潰したものを処理するのは総毛立つほど嫌だった。新聞紙で包む時にはゾワゾワと全身に鳥肌が立った。

パンツだが、オレが見た限りではGとの接触はなかった。
だが気持ちが悪いので洗濯機に放り込んだ。オレが見ていない時に接触していたかもしれないから。お気に入りの勝負パンツの白ボクサーだったのに(泣)

「お前って普通のGは平気で処理できるのに、茶色の足のは駄目なんだね」
「あれは生理的に駄目だ。真っ黒で巨大なヤツの方が良い」
「じゃあ、また茶色のが出たらオレを呼んで。オレはきっと平気だから」

奴はお化け屋敷にもホラー映画にも動じないが、Gも平気らしい。なんて頼もしいんだ! まさに猫だ。オレの昔の実家で飼っていた猫は、Gを見つけると喜んで遊んで、動かなくなったらパリパリと美味しそうに食べていた(汗)

「……貴方は食べないよな?」
「Gを?」
「ああ。猫みたいに。猫みたいだから」
「食べないよー!」

奴はそう言ってオレの顔を両手で挟んだ。
オレはホッとして奴にキスをした。
もうGの事は忘れて、貴重な金曜日の夜を楽しく過ごす事にして。

==========

という訳で、楽しくて賑やかな夜だった。

皆さんも充実した金曜日の夜をお過ごしだろうか?
と言っても、もう4時だな。

皆さんはとっくに寝ているか。
良い夢を見ているか?
間違ってもGがパンツの中に入ってくる夢なんか見るんじゃないぞ。

快適に目覚めて楽しい土曜日をお過ごし下さい。
幸運な週末になるように応援しています。

では、引き続き良い夢を。
おやすみ。

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Theme: 男同士の恋愛 « 恋愛

夏が終わる日の日記
Thu.04.09.2014 Posted in 恋愛
玄関の窓の外から猫の鳴き声が聞こえた。
高くて軽やかで、すぐに雌猫のものだと判る声だった。

「来た!」

それまで牛乳を飲みながら甘食を食べていた奴は立ち上がった。
そしてあらかじめ用意していたカリカリ(猫のご飯)をバッと掴んで玄関に向かった。

オレも奴に着いて行った。
そして玄関のドアをそっと開いて、そこで顔を上げて座っている三毛猫とご対面した。

「可愛い……」

奴とオレはほとんど声を揃えて言った。

妹から聞かされていたが本当に可愛い子だった。
小さな顔に大きな目と耳。ほっそりとした身体に長い尻尾。オレは何故か鍵尻尾の猫ばかりを飼ってきたので(シロ子とガーナ子もだ)、その三毛猫がご飯を食べている間はずっと尻尾を撫でていた。

「オレが飼ってあげたい」
「今のマンションは一匹しか飼えない規則だからな」
「あー……。どうしよう?」
「貴方がここから連れて行ったらシロ子は悲しむからな。妹が飼えたら良いんだが、それもなかなか……」

オレ達は途方に暮れた。
こんなに小さな猫一匹、すぐに飼ってやる事ができなくて。
どんなに猫が好きでも、ただ猫好きである事だけでは非力だ。現実的に猫を保護して養える力がないと。

シロ子は窓からずっと三毛猫を見つめていた。
もしも部屋の中に三毛猫を入れてあげられたら、シロ子はどんなに喜んだことだろう? すまない。

==========

「三毛ちゃんを置いて行くのが辛い」
「外で暮らしている限り、病気と事故と妊娠の心配があるからな」
「せめて避妊手術のお金を出してあげない? 飼い主のいない猫が増えるのと猫エイズの不安をなくしてあげたい」
「そうだな。シロ子達の掛かり付けの病院に連れて行って欲しいと妹に頼もう」

三毛猫が帰ってしまった後、オレ達も帰り支度をしながらそんな話をした。
避妊手術だけでなく、結局は誰かが飼ってやることが出来たら良いな……とも話した。

ところで、オレは今回は実家から、いくつかの品を持って帰った。
昭和40~60年時代に出版された本、年季の入ったスカジャン、もう何年も前に亡くなった祖母が縫ってくれた浴衣、入賞メダル……などなど。

浴衣は奴のリクエストだった。
「お前は似合うのに。ぜっかくあるのに着ないのは勿体無いから持って帰ろう」と言われて。

奴の言うように、確かに似合わない事はないと思う。
だが、ますます人相の悪さが引き立つような気がして2回ほどしか袖を通さずにいた。浴衣を着るとサングラスを掛けたくなるファッションセンスが極道系なのだろうが(苦笑)

今年の夏を納める花火は浴衣を着てやった。
奴が「良いな、ステキだな!」と言ったので「貴方が着るか?」と言ったが、「お前が着て。オレは浴衣を着たお前を抱きしめるから」と言われたので素直にそうした。

ささやかだが華やかな花火だった。
どこのスーパーにでも売っているセットのものだったが、子供の頃から馴染んできたその火花を眺めれば少し感傷的な心地にもなった。

大きめのセットを買ったが、2人でやればあっという間になくなった。
両手に花火を持って昼間のような明るさを楽しんだり、その明るさが途切れてしまうのが嫌で次々に火を付けてしまったから。

最後に残ったのは線香花火のように玉がパチパチと小さく弾ける花火だった。
そんな静かなものを最後にやろうと思ったのは、冴え冴えとした夏が終わってしまう事に無意識にも重ねてしまったからなのかもしれない。

奴との夏も終わってしまうのだなとオレは思った。
本当はもっと色々な事をして遊びたかったという名残惜しい気持ちと共に。

「キレイだね。ずっと玉が落ちなければ良いのに」
「落ちてしまうから情緒があって良いんだが、ちょっと落ちるのが早過ぎるよな」
「うん、早すぎる。夏が終わるのも早すぎたよ」
「ああ、夏を過ごした実感が無い」

最後の最後に残ったのは一本の線香花火だった(線香花火もどき、だが)

オレはそれを奴に持たせた。
けれど奴はオレの手を取って自分の手の上に重ねた。1本の花火を2人で持つように。

「花火の良い匂いがする……って、一昨年に貴方は言ったよな」
「言った?」
「ああ」
「オレは覚えてない。よく覚えていたね」
「貴方の言ったことなら何でも覚えているぞ」
「……うーん、嘘。覚えてなかった事もあるよ」
「ははは」
「あ、笑っちゃ駄目。花火が揺れる」

オレはジッとして花火を見詰めた。
しゃべるのを止めて、息をひそめて。

けれど、パチパチと小さな火花を散らしている玉はどんどん小さくなっていった。そして呆気無く、ポトリと地面に落ちてシュンと消えてしまった。

『ああ……』とオレは心の中で息を漏らした。
花火はもう終わってしまったのだから声に出しても良かった筈だが、何となくまだそうしてはいけないように思えて。

奴も同じだった。
何も言わずにオレの肩に頭を寄せた。
そして暫し玉の落ちてしまった花火を揺らしてから、「終わっちゃった」と呟いた。

「終わったな。もっと大きなセットを買えば良かった」
「ううん、これでちょうど良かった。もうこんな時間だから」
「そうか。ちょっと物足りなかった気もするが」
「花火の匂いがなくなったね。でもお前の着物に少し染み付いてるかな」

奴は燃え尽きた花火を持ったままオレの胸に顔を寄せた。
何も言わずにクンクンと匂いを嗅いでいたが、果たして花火の匂いがしたのだろうか?

花火の明かりと音を失くした周囲はとても暗くて静かだった。
さっきまでの賑やかさは、一瞬のうたた寝で見た夢だったようにも思えた。

「……変な感じだな」
「何が?」
「いや。花火が終わってからようやく夜だったのを思い出した、そんな気分」
「ああ……」

オレは奴の手から燃え尽きた花火を取ってバケツへと投げた。
それから奴の肩を抱いて「部屋に戻らないか?」と囁いた。
今、胸の中にある感傷的で、激しく愛しい気持ちが消えない内に奴を抱いてしまいたくて。

どうして唐突にそんな気持ちになったのかは判らない。
だが夏が終わる日なんてそんなものなのかもしれない。
名残惜しさ、ささやかに楽しかった思い出、辛さと悔しさを支えてくれた感謝。そんなものが無意識にも一斉に脳裏に蘇って。

==========

「まだ脱いだら駄目なのか?」
「駄目だよ。ずっと着ていて。浴衣を着ているお前に抱かれたい」
「貴方は相変わらずそういうのが好きだな」
「好きだよ」
「オレも好きだ」

キスをしながら奴はオレの肌蹴た胸を撫でた。
浴衣の襟を割って手を差し込むのが興奮するとか言いながら。

オレもそうされる事に刺激を感じていた。
奴に襟を割られて胸に手を這わされ、乳首にキスをされ、そうされながら浴衣の上から腰や股間を撫で回されてゾクゾクしていた。

正直なところ着慣れない浴衣は足元がもつれて動きにくかったが、今夜はそれをまとったまま、込み上げる勢いに任せて奴をメチャクチャに貪りたいと思った。今夜も少しだけフェティッシュな楽しみ方を交えて。

「縛ってしまおう」
「浴衣の紐で?」
「ああ」
「オレを?」
「貴方とオレを」

オレは浴衣の紐を解いた。
そしてまずは自分の左手首に紐の端を縛り付け、次に逆の端で奴の左手首を縛った。

一つの手錠で繋がれた様になった。
ただそれだけの事だったが、何故かオレは興奮を覚えた。

「どうだ?」
「こういう戦い方ってあったよね? どちらかが倒れるまで鎖で繋がれて」
「戦うか?」
「戦う」

奴もまた「なんだか興奮する」とオレの耳を甘咬みしながら囁いた。
オレも自分の興奮の程を伝えんとして、奴をベッドに押し倒して昂ぶり勃ったものを押し付けた。

8月が終わる時間が来るまで夢中で繋がろうと約束した。
ベッドを軋ませて、感じている声を出し合って、互いの汗を混じらせ合って、夏に果たし切れなかった心残りを昇華させてしまおうと。

戦いの結果は……。

「オレが勝ちだな」とオレは言ったが、
「お前の全てを飲み込んでしまったオレの勝ちだよ」と奴は言った。

ずる臭い判定だ。
それじゃオレは永遠に勝てないじゃないか。

だがそれで良いと思った。
髪をぐしゃぐしゃにしながら眠る寸前の顔で笑った奴が可愛かったから。

夏が終わって秋になってもオレは奴の良い子の奴隷でいよう。
秋になっても一緒に遊んでもらって楽しく暮らしたいから。

オレ達の夏の終わりの儀式は終了。
ただ浴衣は……まだ暫くは使う事になりそうだ。

実は昨夜も使ったが、それはまた後日のエントリーにて。

==========

本日もを惚気けた長文をお読み下さってありがとうございます。

9月に入ったと思ったらもう5日だ。
まだ昼間は暑いが、夜になると風が涼しくるなる日が多くなった。

皆さんも先月よりは快適に過ごされているか?
都内の代々木公園付近ではデング熱が話題になっているが、早くもっと涼しくなって収束すると良いな。これ以上の被害が出ないように。

今月も皆さんが幸運に日々を過ごせるように応援しています。
皆さんの大切な方も幸せでありますように。

では、今夜も心安らかに楽しい夢を。
おやすみ。

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夏から秋へ変わりゆくように
Tue.02.09.2014 Posted in 恋愛
9月初日の深夜に、ごきげんよう。

流石に今日は忙しかった。
本当は先日の続き、三毛猫ちゃんの事を書きたかったが、それは明日(深夜)か明後日(昼間)にさせて頂きます。

オレの場合、書く予定だったものを先延ばしすると『書く書く詐欺』になりがちだが、今回はそうせずにちゃんと書かせて頂きます。いつも本当に申し訳ありません(汗)

今日は奴も大忙しで、朝は早くから出かけて、夜は23時に帰ってきた。オレよりも遅い帰宅だ。
玄関に入って「ただいま」と言ったと思ったら「お腹が空いたよー」とオレに抱きついて来た。

オレはてっきり奴は外で食べて来たと思っていたので驚いた。

「食べてないなら連絡しろ。家にはロクなもんがないぞ」
「連絡する暇もなかったんだよ」
「……まあ、あるよな、そういう時。時間があっても連絡でき気分じゃなかったり。判った、軽く何か作るから着替えてシャワーを浴びてこい」

奴は「ありがとう!」と言って自分の部屋に行った。
オレも帰宅が遅い時には奴の世話になっているからな。頑張って働いて帰って来た奴に優しくしてやりたい。こんな時にこそ日頃の恩返しだ。

しかし冷蔵庫の中はガラガラだった。
レタスとトマトと山芋はあった。他には卵。あとはチーズ。そしてライ麦パンとご飯と生パスタ。

「何か作れた?」

15分ぐらいで奴はシャワーを浴びて戻ってきた。
オレは「2分待て」と言って、最後の仕上げをした。

作ったのは卵とチーズのホットサンド。
オーソドックスな夜食だ。あの材料から他のメニューは浮かばなかった(汗)

「美味しそう!」
「こんな時間に貴方が食べるのは珍しいな」
「今日だけ特別。眠れないぐらいお腹が空いているんだ」

「いただきます」と奴は言って、食べる前にオレの頬にチュッチュッとキスをした。
疲れているのだからそんなサービスはしなくて良いのに……とオレは思いつつも気を良くして(嬉しそうに感謝されたらやっぱり嬉しいからな!)、食後のカモミールティーを淹れた。

奴が食べている間は今日の出来事などを話した。
だがお茶を飲んでいる時から奴は眠そうな顔をし始めた。
無理もなかった。いつもならベッドに入って既に眠っている時間なのだから。

そういえば以前は、奴が眠そうな顔をすると寂しくなったものだった。
『こんな静かな夜にオレを置いて眠ってしまうのか』と。
『一人で貴方の寝息を聞いているのはとても憎らしい気分になるのに』と。

だが今は、『今日もお疲れ様』と、心から奴を労いたくなる。

奴が眠そうな顔を見せてくれるのも悪くない気分だ。
これからベッドに入って猫みたいに眠るのだと想像すれば、オレも一緒にベッドに入って、眠り行く奴の頭を猫にするように撫でたくなる。『まだ寝るな、もっと話をしよう、朝までセックスをしよう』なんて切羽詰まったような気持ちにはならないで。

激しい恋愛感情はなくなったが、オレみたいな恋愛貧乏性な男には感情が落ち着いた今の方が幸せを感じられるのかもしれない。
激しい気持ちを抱くと辛くなる。心が休まらなくなるぐらい、相手の心も身体も時間も人生も欲しくなって相手を困らせてばかりになる。

もっとも奴にもそういう迷惑を掛けて来た。

『もっと、もっと。身体で証明してくれなければお前を信じられない』と歯止めの効かなくなったオレに繰り返し言葉で言ってくれた。『焦らなくてもオレは一生お前の傍にいる』と。それでもオレはなかなか信じられなくて先走った行動ばかりを取ってしまったが。

それを経て今のオレ達の落ち着いた関係がある。
相手が奴でなかったら絶対にあり得ない関係だったと思う。
奴が頑固で負けず嫌いで優しい男で良かった。

「おやすみ、お前も早く寝るんだよ」

奴はベッドに入ってそう言った。
オレは頷いた。「おやすみ、良い夢を」と言って。

それで奴は目を閉じた。
しかしすぐさまパッと目を開いて、急に「アップルパイ!」と言った。

「アップルパイ?」
「オレの鞄の中にあるんだ」
「貴方の鞄にアップルパイが?」
「お客さんからもらったんだ。冷蔵庫に入れておけば3日は保つって。悪いけど後でオレの部屋に行って鞄から出しておいて」

オレは了解した。
そんな大切な事を忘れてしまって、いきなり思い出した事に笑いながら。

「明日の夜、一緒に食べようよ」

奴は片目を閉じてニッと笑った。
オレも笑い返して奴の頭を撫でた。さあ猫みたいにぐっすりと寝ろと、心の中で語りながら。

明日の夜の楽しみが出来た。
明日はオレの帰宅が遅くなるが、奴が待っていてくれたら嬉しい。冷蔵保存で3日は保つとの事だから、オレも奴も早く帰れる明後日に食べるのも良いな。

という訳で、
皆さんも今日はご多忙だったかと思う。
そして今日から学校が始まった方もおられるだろうな。

お疲れ様でした。
今日から始まった9月、そして秋は、皆さんにとって豊かな幸運の毎日となるように祈っています。
まだ残暑が続くかもしれないが体調を損ねることなく元気にお過ごし下さい。

では、今夜も心安らかに幸せな夢を。
おやすみ。

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