歯止めない欲望 - 過去語り act.14
Sat.16.03.2013 Posted in 過去語り
■これは奴と付き合う以前の過去を語っているエントリーです。

春も近くなって、奴はすっかり会社の環境に慣れたようだった。
仕事も覚えて他の部署の人間との遣り取りも難なくこなすようになった。

奴にはちょっした目標があって、その為にとても仕事熱心だった。
少々頑固な気質があるが物覚えが良くて、口では説明し切れない微妙な部分(特定の人物や組織への対応)も直感的に理解してくれた。

上司としての立場から見て、奴はとても可愛い部下だった。
応援したくなるのは当然だった。
だがオレの場合、個人的な感情が大きくプラスされて必要以上に目を掛けたくなるから困ったものだった(苦笑)

==========

冬季プロジェクトの結果が出た後、オレは自分のチームのメンバー達を誘って飲みに行った。
何故かオレのチームには酒が好きな者ばかりが集まっていたので、成績が良かった事に祝杯を上げて、好きなものを好きなだけ飲んで楽しんでもらう事にした。

だが、そんな陽気に楽しむ為の飲み会が、刻々と悪化して行く不景気のせいで、いまいちノリの悪いムードになってしまった。
今回の成績は今の業界の平均を見ればそこそこ良い数字と言えたが、一昨年や昨年と比べれば楽観できないものだったから。

誰かが不安を漏らせば全員に影響した。実際、身近な範囲で倒産の危機に面している会社も幾つかあった。
そんな話題があった後に『不景気は長引かない』といったポジティブな発言を誰かがしたところで、今の社会を見ればリアリティに欠けていた。

まあ、それでも乾杯や楽しい話題を振ることで何とか雰囲気を盛り上げられたが……。
その場にいた多くの者がそうであったように、奴も不安を消し切ることが出来なかったようだった。

そろそろお開きにしようと思った頃、奴はオレの隣でポツリと言った。「○○(他の部署の名称)に移るには思ったより時間が掛かるかな」と。

オレは反射的に思った。オレに出来る事ならなんでもするからそう決め付けるな、と。
しかしそれは、特定の個人を贔屓するという上司としてあるまじき意味合いも含んでいた。奴を必要以上に上役や顧客に推薦する事も出来る……と。

もっともオレは、そんな事が出来るほど融通の効く人間ではなかった。奴を推したいと思いながらも、奴よりもずっと長い期間に渡って部署を支えてくれた人達の事も忘れることの出来ない生ぬるい人間だった。

「景気の良かった頃よりは時間が掛るかもしれないが、Y君は評判がいいぞ。良い人材が来たって○○の上役も言っていたしな」
「本当に? それなら希望を持っていても良いかな」
「ああ。Y君が今の部署に居るのは試用期間みたいなものだしな。不安に思う事があるなら何でも言ってくれ」
「不安な事ではないけど、相談したい事があるからまた飲みに行かない?」

奴と最後に飲みに行ったのは、もう2ヶ月近くも前だった。しかもその時は2人ではなく他の人間も一緒だった。

春の慌ただしい時期が終わったばかりだった事もあって、久しぶりにのんびりと飲みたくなった。奴の相談とやらを聞きながらじっくりと飲むのも良いように思えた。

「都合の良い時に声を掛けてくれ」
「今週の金曜日でも?」
「大丈夫だ」

かつては週末に予定が入っていない事を恥ずかいと思ったオレだが、今は週末暇人であって良かったと思った。
例え予定が入っていたとしても奴との約束を優先してしまうのだろうがな。『男は友情を優先する』といった言葉をたまに耳にするが、あんな類のものは男女差関係なく個人や状況に依るものだ。

「帰ったらメールする」
「待ってる」

駅で別れる時に奴と週末の予定を決める約束を交わした。

帰宅して、オレはそそくさとバーを探した。長居してじっくりと話し込める雰囲気の良いバーはないかと。
10分ぐらいで決めて、電話で予約を入れて、奴にメールした。『金曜日の仕事が終わったら、○○駅前○○口の改札で落ち合おう』と。

==========

その日は冬に戻ったように寒かった。
奴と2人でバーに入れば、まだ時間が早かった事もあって店内には一人の客も居なかった。

「貸切状態だな」
「ずっと暇だったらサービスしてくれないかな?」
「他の客の分も金を落とせって、高いボトルを勧められるぞ」
「あはは、それは嫌だな」

東京タワーを中心に都心の景色が一望できる席に案内された。
そんな景色を眺めながら飲むのが好きなオレと何度か飲むようになって、奴もそんな雰囲気の店が好きになってくれた。

「寒いと夜景がキレイに見えるだろう?」
「うん、いつもより照明が鮮明に見えるね」
「何を飲む?」
「……シャンパン、で良いかな? こういうお店だとシャンパンが飲みたくなる」

奴は遠慮がちにシャンパンリストの中からグラスシャンパンを選んだ。
オレは「同感。一緒に飲もう」と言って、奴が指さしたシャンパンをボトルでオーダーした。それは口当たりの良い辛口で、料理にとても良く合うものだったから。

一杯目のシャンパンで乾杯を交わして、お互いにそれを飲み干した。
奴は軽く苦笑して「贅沢な味」と言った。
オレは胸の中で呟いた。他の誰でもない貴方と過ごしているから贅沢なものを飲んでいるんだ、と。

料理は、前菜、スープ、魚、肉、パスタと、色々なものをオーダーして、取り皿に分けて2人で半分ずつ食べた。
それが美しい夜景と相まってまるでデートのようで、ちょっと照れ臭い思いをした(笑)

「いつもこんなお店で飲むの? 友達とも?」

と、奴は以前にもした質問をオレに振った。
「好きだからな」とオレは答えた。もっと判りやすい答え方はたくさんあったが、奴に向かって「好きだ」という言葉を投げ掛けたかった為にそんな答え方を選んだ。

「パブや小料理屋で飲むこともあるぞ」
「料理は何が一番好き?」
「和食。でもイタリアンもフランチもスパニッシュも好きだ。Y君は?」
「北欧料理」
「ああ! そういえば行ってみたい北欧料理のレストランがあるんだ。一緒に行かないか? 本場の味が判らないから色々と教えてくれ」
「良いよ。でも今度はオレにご馳走させて」
「判った」

奴の相談を聞く筈が、気付いてみればそんな話をしていた。
『ところで相談はいいのか?』とオレの方から切り出そうかとも思ったが、仕事の話よりもプライベートな話をしていたかったので、敢えてそうしなかった。

バーに入って1時間も経てば、ガラガラだった席が徐々に埋まっていた。
オレ達はシャンパンを飲み干して赤ワインを飲んでいて、心地良く酔いが回りだした頃だった。

「少し暑いね」

今日は寒くて暖房が効いていた為か、奴はそう言ってスーツの上着を脱いだ。
オレはその様を眺めていた。ダークグレーのスーツを脱げば細身のワイシャツ姿となって、奴のスレンダーな身体のラインを伺わせた。

「Y君は細いな」
「鍛えていないから。筋肉を付けても似合わないって判っているから、簡単なストレッチとウオーキングぐらいしかしないんだ」
「ああ、その方が良い。今のY君の雰囲気が好きだ」

酔いと雰囲気に任せて、オレはそんな事を言ってしまった。
肉体や容姿の事に触れたらオレの気持ち(下心)がバレしまいそうで、だから今まで一言も言わなかったのに。

だが、不思議と平然としていられた。
ワイングラスを手放す事は出来なかったが(何かを持っていると安心しないか?)、そのままソファに凭れて、ずっと奴を眺め続けていられた。

けれどそれで良かったのかもしれない。その様子は、あくまでも奴のファッションセンスを見ている様に思えただろうから。……多分な(苦笑)

「嬉しいな」

奴ははにかむように笑った。
その時の、少し俯きながら下唇を噛んでニコニコとした顔が可愛くて、出来れば携帯カメラで写真に残しておきたい程だった。

その晩は2人で1本のシャンパンと、2本の赤ワインを空けた。

2本目を飲んでいる最中、オレもスーツの上着を脱いだ。
奴はネクタイを解いて喉元の白い肌を露わにさせた。オレはそれを無視する事ができなかった。

それどころか、奴が隣に居るというのに奴の肉体を想像した。
全裸にしたらどこまでも白い肌が続いているのだろうと想像したら欲望が込み上げて、奴に対してエロティックな話題を振りたくなった。

だが相手は部下で、指向はストレートだった。決してオレが性的な興味を抱いている事を悟られてはいけない相手だった。
馴染みの飲み屋でならいくらでもエロティックなゲーム(言葉遊び)を仕掛ける事が出来たのに。ストレートに「お前が好きでたまらないからお前とセックスしたい」と言うことだって出来た。

しかしこうした欲望とは厄介なもので、抑さえ付ければ抑え付けるほど昂ぶる。
お陰でオレは妄想の中での奴の肉体の虜になった。
奴の白い裸や薄桃色の乳首を想像しては興奮して、何度も自分の手の中で自分の欲望を満たした。

そんな紳士的な妄想のみでは収まらず、もっと淫らで不道徳な想像もした。

例えば奴の顔にも身体にも気が狂ったようなペインティングを施して、その肉体を前から後ろから激しく突き上げる妄想もした。あるいは、奴を雑木林の木に縛り付けて全身を舐め回した挙句に立ったまま揺さぶる妄想もした。

けれど、オレが頭の中をそんなものでいっぱいにしていると言うのに、奴は何も知らずにオレに限りなく親しく接するようになっていった。
2人で合う回数が増えて、随分とプライベートな話もするようになって、奴に信用されて頼られている事すら実感した。

それはゲームをしているような楽しい感覚もあったが、罪悪感の方が大きかった。妄想は決して叶えられないまま終わるという結論も判っていたので虚しさもあった。

だがオレは、そんな自分を恥じながらも奴と親しく接する事を選んだ。
奴と過ごすのはとても楽しくて、急にそれを止めるなど到底できなかった。

案外、結ばれる事のない相手だったからオレはそこまで奴を好きになれたのかもしれない。
オレはもう誰のことも好きにならないと決めた人間だったから、奴がオレの手に届きそうな相手なら逃げていたように思う。

誰のことも好きにならないという誓いは果たせなかったが、永遠に結ばれることのない奴に片思いをし続ける事で、オレは自分の罪を見逃そうとしたのかもしれない。

==========

『連休中に会えない?』

休日の朝に自慰をしている時、携帯メールの着信音が鳴った。
オレは差出人が奴であると直感して携帯を開いた(休みのそんな時間にメールを寄越すのはほんの数人しか居ない)

案の定、奴からだった。
だがオレは自分のものを扱く手をそのままにして奴の文章を眺めた。

そしてフと、可笑しな衝動に取り憑かれた。
『お前を思ってオナニーをしている。真っ白で細い身体を撫で回して、薄ピンク色の乳首に吸い付いて、お前の○○○○の中は凄く気持ちが良い』と淫らな乱文を打って、奴に返信してしまう前に削除した。

何故か酷く興奮した。
猛烈に奴を突き上げたい欲望に駆られた。

果てた後、奴を抱けるならオレは何でもするかもしれないと思った。
そして、本当にオレはこのままこの想いを秘めていられるのだろうかと不安になった。

この度も大変に遅くなって申し訳ありません。言い訳となりますが、奴がオレの誕生日を祝ってくれました。誕生日はまた少し先なのですが、週末に祝ってしまいたいと言って。 「もう!仕方ないね!これからも続きを待ってるよ!」 と懲りずに思って下さる方はランキングバナーのクリックをお願い致します。 予告をしておきながらのこの体たらくで真にすみませんm(__)m
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